5.5 TUE 15:40-16:20 TSUBASA STAGE
ROTH BART BARON

ビバラに訪れた静かなる衝撃

三船雅也(Vo&G)の声は美しい。サウンドチェックのほんの短い時間で人の心を掴む気高さがある。「VIVA LA ROCK!」と勢いよく叫ぶサウンドロゴも、このバンドにはどうも不似合いだ。ROTH BART BARONは三船と中原鉄也(Dr)による2人組だが、今日は3人のサポートメンバーを従えてのライヴだ。しかも、使用される楽器の数がとんでもなく多く、キーボード、トランペット、トロンボーン、フルート、ハルモニウム、グロッケン複数台などを持ち替え、美しいサウンドスケープを描き出した。

“Buffalo”と“Campfire”でバンドの世界観を提示し、「ありがとうございます」と、聞こえるか聞こえないかぐらいの声で三船が挨拶した後、“化け物山と合唱団”へ。彼らの大陸的でダイナミックなサウンドはアメリカや北欧のロックを思わせるが、間違いなくここ日本で生まれた音楽である。緻密なアンサンブルながらも、原始的な欲求に身を任せるような豪快な演奏も実に気持ちいい。特に、楽曲中盤で聴かせる五声の美しいコーラスワークには、血管が膨張するような興奮を覚えた。ただ美しいだけではない。聴き手の心に強烈に訴えかけてくる熱量がひとつひとつの音とその重なりに潜んでいるのだ。

「こういうフェスティヴァルは初めてなんです。1曲目で興奮し過ぎて、(ギターの)弦がイカれてしまいました」と笑わせた後、「もうちょっとだけおつき合いください」と、壮大なコーラスから始まる“小さな巨人”を披露する。オーディエンスからは、体を揺らしながら、ひとつひとつの音と歌に心を傾けている様子が伝わってくる。ビールを持つ手が止まっている。

“氷河期#3”の演奏前には、そんな彼らに向かって「途中でこういうふうに歌うんです。もしよかったら皆さんも一緒にどうぞ」と三原が歌ってみせ、コーラスを要求。正直、この場に集った人はそこまで多くなかったし、シャイな日本人にはどうかと不安に思ったが、親しみやすいメロディが、徐々に高揚感を増す演奏が、次第に人々の口を開かせ、最後には皆が一体となって大声を上げた。

ラストの“氷河期#2(Monster)”では、これまで築き上げてきた世界を一気に崩壊させるようなアヴァンギャルドな演奏も交え、壮大なエンディングを迎えた。ああ、自分達だけがこんなライヴを楽しんでしまっていいのだろうか。もっと多くの人に、海外の音楽ファンにまでこの音を届けたい。そんな風に思わせるROTH BART BARONのフェスデビューだった。

(阿刀“DA”大志)

セットリスト

1. Buffalo
2. Campfire
3. 化け物山と合唱団
4. 小さな巨人
5. 氷河期#3
6. 氷河期#2(Monster)