5.3 SUN 18:30-19:20 STAR STAGE
スピッツ

完全無欠の名曲ショウ

リラックスした様子でステージ上に現れた4人。あちこちから上がる歓声に応えるでもなく、すっと定位置について鳴らされた挨拶代わりの1曲目は“夢追い虫”。草野の瑞々しい歌声と安定感のある鉄壁の演奏が場内に響き渡る。続く“不死身のビーナス”はオールドファンにはたまらない選曲だが、初見のオーディエンスの心も鷲掴みにする、アッパーながらも切ないキラーチューン。のっけからフロアの興奮が高まる。

「埼玉県人じゃない人もいると思うけど、敢えて言おう。埼玉最高!」という草野のMCに続いてプレイされたのは“春の歌”。音源にはないアンサンブルを曲の後半にたっぷり聴かせる。三輪のギターカッティングが実に気持ちいい。

時代を越えて愛される名曲“チェリー”では、イントロのドラムフィルの時点で歓声が沸く。オーディエンスが一様に彼らの演奏にのめり込んでいる様子がこんなところからも伝わってくる。熱狂して手を挙げるというよりも、じっくりと聴き入ってる人が多いのが印象的だった。

言うまでもなく、スピッツには名曲が限りなくある。だから、こういったフェスの場で一体どの曲が演奏されるのか予想するのもスピッツライブの楽しみ方のひとつ。そんな人が多いのか、“魔法のコトバ”が鳴らされた瞬間、「おお~!」という「その曲キタか!」的などよめきが起こったのが面白い。

面白いと言えば、草野によるメンバー紹介。「ベースの田村です……あとのメンバーはWikipediaで調べてください」と軽いユーモアで笑わせ、そんな流れから新曲“雪風”を披露するんだから、なんとも自由なバンドだ。

スピッツのことを草食系ポップバンドだと思っているリスナーはまだまだ多い。しかし、ベース田村のプレイを見たら考え方を改めるだろう。同期のドラムを使用した“運命の人”では、徐々に彼の動きが激しくなり、アイリッシュパンクテイストの“野生のポルカ”~“恋する凡人”~“8823”といったロックチューンの畳み掛けで完全にスイッチオン。ステージを予測不能な動きで駆けずり回る彼の姿はまぎれもなくパンクスのそれ。スピッツというバンドの二面性を短い時間で明確に伝える、素晴らしいパフォーマンスだった。

(阿刀“DA”大志)

セットリスト

1. 夢追い虫
2. 不死身のビーナス
3. 春の歌
4. チェリー
5. 魔法のコトバ
6. 雪風
7. 運命の人
8. 野生のポルカ
9. 恋する凡人
10. 8823