5.28 SAT 14:00-14:30 GARDEN STAGE
H ZETTRIO

道化さながらのユーモラスな精神と
超絶技巧の神業で巻き起こした、笑顔の嵐

鼻を青くペイントした女の子を抱きかかえたお母さんが楽しそうな表情でステージを見守るなど、開始前からたまアリ内の会場とはまったく異なる老若男女がゆったりと集まっていたGARDEN STAGE。誰もが立ち寄れる無料観覧エリア:VIVA LA GARDENの一角に作られたこのステージのトップバッターに登場したのは、H ZETTRIO。PE’Zや、あるいは東京事変の初期のメンバーとしても知られるピアニスト、H ZETT Mを擁するジャズトリオだ。開演前のサウンドチェックの段階からコミカルな動きでおどけて見せてはお客さんを煽りながら、そこに集っている様々な人々にピースフルな空気を振りまいていくピエロH ZETT M。「これから何かが始まるんだ」っていうワクワクした期待が充満する中、いざ始まったステージは、まさに予測不可能の変幻自在な超演だった。

互いに目だけで呼吸を合わせながら繰り広げられる、H ZETT NIRE(B)、H ZETT KOU(Dr)らによるまったく手の動きが読めないリズミカルな演奏が、言葉はなくとも「歌え! 踊れ! 笑え!」と訴え、風のない凪いだ生暖かい空気の中彼らの怒涛の演奏だけが嵐のように吹き荒れ歓声を巻き起こす。続く2曲目“晴天-Hale Sola-”では靴を片方ずつ脱いでいき、鍵盤を叩きながら(最後は歯も使って)靴紐を結んでいくという、遊び心に満ちた神業を披露。メンバー全員がユーモアに満ち、笑顔と奇妙な動作で、ジャズプレイヤーとして一流なだけでなく、屈指のエンターテーナーにしてアジテーターである姿を見せつけながらフィールドのヴォルテージを一気に上昇させていった。

メンバー紹介を終えて突入した後半戦では、一際メロディアスな“Beautiful Flight”で会場中に横揺れを生み出しこれまでとは異なるフィーリングを会場にもたらし、H ZETT Mが最後は回転しながら背面で鍵盤を叩きフィニッシュ。さらにはショルダーキーボードを持ち出しまでギターのような構えでブチ弾いたかと思えば、“Wonderful Flight”では鍵盤をオーディエンスのほうへ縦に傾け、プレイのすべてを晒しながら引き倒すなど異次元のプレイを連発。楽器が完全に身体の一部となっているものだけができる、「生き物」の音楽を遺憾なく披露した超演でその場にいた全員を魅了した会場は、愛と自由と終始絶えない笑顔が雲ひとつない空へと咲き誇った。

(黒田隆太朗)

セットリスト

1. Dancing in the mood
2. 晴天 -Hale Sola-
3. Trio,Trio,Trio!!!
4. Beautiful Flight
5. Smile
6. Wonderful Flight

撮影=釘野孝宏