5.28 SAT 15:35-16:10 CAVE STAGE
My Hair is Bad

生き様と存在証明が暴発した
疾走アクトで、CAVEを完全掌握!

むせ返るような熱気に包まれたステージにSEなしでフラリと現れた椎木。「VIVA LA ROCK2016、このライヴハウスでドキドキしにきました!」と絶叫すると、いきなりこの1年で一躍彼らの代表曲に育った“真赤”を投下した。<ブラジャーのホックを外す時だけ/心の中までわかった気がした>という赤裸々な一節に、パンパンに膨れ上がったフロアから拳と大合唱が沸き上がる。燃えるような赤に照らされたステージ上で高く跳ねながらジャキジャキに尖ったギターを弾きちぎる椎木。演奏が少々ヨレようが、ミストーンが出ようがお構いなしで猛進するパフォーマンスに、オーディエンスも遠慮なく突進し、CAVE全体にエネルギッシュな熱狂が弾けていく。

「ドキドキしようぜ!」とたびたび叫ぶ椎木の姿が象徴している通り、予想範囲内の楽しさなんて求めていないライヴ。その瞬間、その一言一句にどれだけの「今の自分」を注ぎ込めるかの勝負をひたすら挑んでいるようで、魂を掴まれたようにステージ上の3人を見つめたまま固まってしまうような観客も多く見られた。何が起こるかわからない――そういう「一瞬たりとも見逃せない」スリリングな感覚から生まれる濃度の高い熱狂こそが、マイヘアの武器だ。

「僕らは年間百何十本もライヴしてるんですが、そうやって毎日ライヴハウスに命懸けてる俺らが、今日初めてライヴするようなバンドに負けるわけねえだろ!」という、短いけれどロックバンドの生き様・プライドそのものを表した言葉を、まるで何かが暴発するように、何かに憑かれたように叫んだ椎木。そのまま雪崩こんだ“フロムナウオン”でも、その瞬間に脳裏に浮かんだ言葉を次々に連打していく。「闘え! 逃げるな!」「勝ち負けなんて古いなんて言うなら、ただ家にこもって一生負けてろ!」「俺はバンドやってる、君は何になりたい!? 俺はバンドやってるけど有名になりたいとは思わない、俺は、男になりてえ!」――大それた夢を歌うわけでもないし、かと言って世界への諦観があるわけでもない。その狭間でひたすら生きているという実感を掴むために闘い続けるだけの歌だ。時代を背負っているわけでもないし、世代を代弁しようともしてない。だが、情けなさや弱さも含め、ひたすらに自分自身を抉り出す切実さが、時代以上に、世代以上に、人間そのものを揺さぶるような音楽になっているのだと思う。

“戦争を知らない大人たち”、“クリサンセマム”を立て続けに披露してライヴを終えると、椎木はピットにダイヴした。生身のぶつかり合いでしか得られない熱を最後の最後まで求め続けた35分間。なんだかとんでもない事件を目にしたような気分になるライヴだった。

(矢島大地)

セットリスト

1. 真赤
2. アフターアワー
3. 元彼氏として
4. フロムナウオン
5. 卒業
6. 戦争を知らない大人たち
7. クリサンセマム

撮影=Viola Kam (V'z Twinkle)