5.28 SAT 15:10-15:40 GARDEN STAGE
シナリオアート

「今」のシナリオアートが持つ、
強い希望と放熱の意志に貫かれた怒涛の快演

フィールド後方までいっぱいに詰めかけたオーディエンスを、海の底へ潜るような映像的なエレクトロニカで自身らの世界観に引き込んでいく――そんな印象的な始まりでスタートしたシナリオアートのライヴは、アップテンポなリズムと美しい音響が同居した“スペイシー”でのっけからハンズクラップを巻き起こす攻めの30分だった。“ハロウシンパシー”、“アオイコドク”と即時性の高いナンバーを連投。極めつけは、「みんなが抱えてるモヤモヤも一緒にぶっ壊したい」と言い“シニカルデトックス”。彼らにしてはいつになく滾るエナジーを爆発させ、短い時間を熱くエモーショナルに駆け抜けていった。

途中、「どこよりも聴いてくれてる人が多いね。鳥や風や霧も聴いてるからね」というMCで笑いを誘うひと幕も。「シナリオアートを初めて観たっていう人―?」という問いかけで多くの手が挙がったが、フェスという一期一会の場を自分達の未来に繋がる財産にできるか否かは、そのバンド自身にかかっている。この日のシナリオアートは音楽というコミュニケーションを通してしっかりとその場に集った人の心を掴み、包み込み、そして開放させていった。誰もが出入り自由のフリーなオープンスペースであるGARDEN STAGEは、けれどこの時、確かにシナリオアートという純粋な桃源郷と化していた。

最後は“ホワイトレインコートマン”から再び怒涛のアンサンブルを聴かせるパートへと突入。楽曲を先導するように張り上げるハットリクミコの声は、暗い感情を吹き飛ばすような明るさと、彼女が宿す意志の強さが漲っていてバンドが持つ「情熱」を体現。ラストの“ナナヒツジ”での気迫の籠ったユニゾンの熱唱でフィナーレを迎えるまで、終始「今」の彼らの理想と信念、そしてその勢いを貫いたパッショナブルなライヴだった。

(黒田隆太朗)

セットリスト

1. スペイシー
2. ハロウシンパシー
3. アオイコドク
4. シニカルデトックス
5. ホワイトレインコートマン
6. ナナヒツジ

撮影=釘野孝宏