5.4 THU 17:00-17:35 CAVE STAGE
ぼくのりりっくのぼうよみ

大いなる飛躍を見せた
ぼくりりの「物語の完成」

覚醒している。目の前にいる19歳は、今、恐るべき速度で成長している。

ぼくのりりっくのぼうよみ2度目のVIVA LA ROCKは、心底そう思わせるステージだった。なにしろ去年は彼にとって初のフェス出演である。その時はまだ緊張も見えた。枠に収まらない彼の天才性をありありと示した場ではあったが、同時に初々しさも垣間見えていた。

そこから1年。今年初頭にリリースされた2ndアルバム『Noah's Ark』のツアーを経て彼のパフォーマンスは大きく化けた。堂々とオーディエンスに向き合い、その歌声の力で曲の世界に惹き込み、魅了するものになった。

CAVE STAGEは始まる前からぎっしりの満員。ブレイクの真っ最中にある今の彼の勢いからしたら、もはや狭いくらいだろう。まずはキャッチーな新曲“SKY’s the limit”を挨拶代わりに歌うと、続いては1stアルバム『hollow world』から“CITI” “sub/objective”。の2曲を披露する。去年のビバラでも歌っていた曲だ。だけど、以前とはまるで別物のように聴こえる。

「『Noah’s Ark』という2枚目のアルバムでは、物語を作ろうと思って。それがライヴで聴くと完成するようになっているんで、そのダイジェストをやろうと思います」

と語り、後半は新作アルバム『Noah’s Ark』からピックアップした曲を続けて披露する展開。DJ、ドラム/パーカッション、キーボードというバンド演奏をバックにすることで、どの曲も生々しい肉体性を持つサウンドにビルドアップしている。力強いヴォーカリゼーションを見せた“Be Noble (re-build)”から、情感たっぷりに歌う“在り処”。”Liar”ではバック・ミュージシャンたちとのセッションのようなラップで息を呑むような瞬間を作る。

ラストは“Noah’s Ark”。短い時間だったが、「情報の濁流が巻き起こす洪水後の世界」を描いたアルバムの物語を完璧に演じきっていた。

一礼して彼がステージを降りた後、数秒の間、オーディエンスにはまるで圧倒されたかのような静寂が広がっていた。恐れ入った。

(柴 那典)

セットリスト

1. SKY’s the limit
2. CITI
3. sub/objective
4. Be noble (re-build)
5. 在り処
6. Liar
7. Noah’s Ark

撮影=釘野孝宏