5.5 FRI 19:30-20:30 STAR STAGE
Dragon Ash

これぞ「VIVA LA ROCK」!
全ての思いに応えた万感のフィナーレ

いよいよこの瞬間がやってきた。

VIVA LA ROCKというフェスと、ある種の特別な「絆」で結ばれたバンド、ドラゴンアッシュ。日本のロックシーンのトップランカーとして、20年間、時には深い傷を負いながらも歩み続けてきた彼らが、ヘッドライナーとしてステージに立つ。4年連続の出演となる彼らが、今年は大トリとしてフェスを締めくくる大役を担うわけである。

きっと、そのことの持つ意味を噛み締めていたのは彼らだけではないはずだ。ステージ脇では、この日に出演した数々の戦友と呼ぶべきバンドのメンバーたちがその姿を見守っていた。まるまる1日を汗だくになって暴れてきたオーディエンスたちは、彼らがどんな大団円を見せてくれるのか、期待に胸を高めていた。

そういう数々の思いに、彼らは最高の形で応えてくれた。ロックバンドだけが描くことのできる、ロックフェスだからこそ生まれる物語を彩ってくれた。

「今日の曲順は頭からケツまで『MUSICA』の有泉ちゃんが作ってくれたんだ」

Kj(Vo&G)は途中のMCでこう明かした。久々にアルバムを作ってリリースすること、そしてバンドマンはみなそうだろうけど、特に自分は作ったばかりの新曲を何よりやりたい性格だということを語る。それでも彼はフェスの意気に応えることを選んだのだろう。「もし久々に聴いた曲があったり、初めて聴いて『いいな』って思う曲があったりしたら、泉ちゃんに『ありがと』って言ってあげてください」。そんなふうにKjは続けた。

というわけで。この日の彼らが見せたのは、大きくわけて3つの姿だった。

一つ目は最新型のモード。ライブはBOTS(DJ)によるSEから始まった。まずはDRI-VとATSUSHIの2人のダンサーが登場し、続いて桜井誠(Dr)、HIROKI(G)、サポートをつとめるKenKen(B)、そして中央にKjという鉄壁の布陣が揃う。オープニングナンバーの“Mix It Up”は、まるで猛獣のような重低音をぶっ放す一曲。そして中盤の“Beside You”で見せてくれたのは、地響きのようなビートと浮遊するディレイギターが織りなす新境地のサウンドだ。どちらも今年リリースされたばかりのナンバー。5月末に予定されている新作『MAJESTIC』も凄まじいものになりそうだ。

二つ目は、日本最強の「ライブモンスター」としての姿。数万人を熱狂の渦に叩き込み、高く飛ばせてきた圧倒的なパワーとエネルギーだ。序盤の“AMBITIOUS”や“For divers area”では、ラテンの高揚感とドラムンベースのビートを取り込んだ、彼らにしか鳴らせないミクスチャー・ロックの真髄を見せる。“The Live”ではKenKenが目を奪うベースプレイを披露し〈いなくなったあなたのためにも〉と歌う。

本編のラスト2曲は“百合の咲く場所で”と“Fantasista”。どちらもフロアを一発でレッドゾーンに持っていくライブ・アンセムだ。「怪我すんなよ!」「倒れてるやつがいたら助けてやれよ」「セキュリティに担がれたら感謝しろよな」「誰かが楽しそうにしてたら、そいつとハイタッチすればいい」「なんでもいい、ルールなんていらねえ。俺たちに音楽好きな気持ちがあればいいんだ。ぶっ飛べ!」。Kjはそうオーディエンスに告げる。

「このフェスが始まるとき、鹿野さんは『ダイブもモッシュもアリだ、そのまんまで戦おうぜ』って言ってくれた。絶対忘れねえ」。彼はそんな風にも言っていた。数万人規模のメガフェスで、ライブハウスと同じような、互いの気持ちで成り立つ「遊び場」を作る。そういう運営側の意図を誰よりも意気に感じている一人が彼なのだろう。

そして三つ目は、普段のライヴではなかなか見れない、けれど「みんなが見たかった」スペシャルなDragon Ash。この日の彼らは、久しぶりの曲をたくさんプレイした。“陽はまたのぼりくりかえす”もやった。そして、2ndアルバム『Buzz Songs』のシークレットトラックとして収録された「隠れた名曲」“Iceman”もプレイ。しばしのざわめきの後に沸騰するフロアを見回して、Kjはまるで少年のような笑みを見せていた。

アンコールは“Viva la Revolution”。これも、彼らとオーディエンスにとっての、特別な一曲だ。声を合わせて歌うお客さん一人ひとりの顔がヴィジョンに大写しになる。Kjは<塗り替えるのは僕達(ぼくら)の世代>という原曲の歌詞を、<塗り替えるのは君達(きみら)の世代>と変えて歌う。

さらに曲の途中では天井から大量のカラフルな風船が落ちてくるというサプライズの演出も。Kjは「ちょっと待って!全然聞いてねえよ!」と目を見開いて驚いた顔を見せる。

そしてラストは“Curtain Call”。ドラマティックな爆音を鳴らす中、数万人が色とりどりの風船を笑顔で掲げる光景は、「これぞVIVA LA ROCK」と感慨がこみ上げるようなものだった。

終演後には、石毛輝がプレゼンターとして登場して20周年を祝うケーキを贈り、この日出演した様々なアーティストを交えて写真撮影をして終了(その写真はVIVA LA ROCKのトップページに掲載されてます!)。

万感の思いがこもったフィナーレだった。

(柴那典)

セットリスト

1. Mix It Up
2. AMBITIOUS
3. For divers area
4. Iceman
5. Beside You
6. 陽はまたのぼりくりかえす
7. The Live
8. 百合の咲く場所で
9. Fantasista
EN1. Viva la Revolution
EN2. Curtain Call

撮影=古渓一道