5.4 THU 17:50-18:40 STAR STAGE
サカナクション

尽きせぬ探究心と止まらぬイノベーション
想像を上回る超展開でフロアに激震走る

なんじゃ、こりゃあ。今までにない体験だった。ここがピークかと思ったらさらにそれを超えてくる。しかも、意表をついた展開で何度も、何度も。世界中に数多くのダンスアクトはあれど、こんなにオルタナティヴかつ、完全オリジナルなアティチュードで驚きを与えるグループは珍しい。今年でデビュー10周年を迎える5人組は、まだまだ日本のロック史を塗り替え足りないようだ。

オープニングの“新宝島”からパンパンのSTAR STAGEは激揺れ。続く“アルクアラウンド”では、PA卓後方ブースでこの原稿を書いている筆者もタイプする手元が狂いそうなぐらいの激震へと発展。ただでさえ数多くの音楽ファンに愛されている楽曲なのに、それを強靭なビートで鳴らされた日にはたまったもんじゃない。しかも古くからのファンにはうれしい“三日月サンセット”がそれに続くんだ。

圧巻だったのは中盤。「みなさん、VIVA LA ROCK楽しんでますか?これからしばらくの間、自分のステップで自由に踊ってください!」と山口一郎(Vo&G)が観客に呼びかけると、自ら先陣を切り、ビートに合わせて軽やかにステップを踏む。そして、メンバー紹介代わりのソロコーナーを終え、ブレイクと同時に暗転。そして、再びステージが背後から白色の照明によって強烈に照らされると、そこに浮かび上がったのは別卓に乗せられた機材前に一列に並ぶ5人のシルエット。そして、天からの啓示のような“SORATO”のコーラスが降り注ぎ、鳥肌モノのピークを迎えるとともにダンスタイムへと突入。

しかし、そのまま最後まで突っ走るかと思いきや、“ミュージック”の大サビ前にまたもや舞台が暗転し、まばゆい光に再度照らされると、各メンバーが元の持ち場に戻っている――。仕掛けとしては大掛かりなものではない。だけど、楽曲の展開と巧みに連動したこの演出には心底シビれた。

もうこれで終わってもいいぐらいなのだが、5人はそう簡単にダンスを止めさせてはくれない。“夜の踊り子”~“アイデンティティ”~“多分、風。”ですよ。脳内麻薬がドバドバと溢れ、得も言われぬ快感が体中を駆け巡る。汗をかきながら鳥肌が立つような瞬間が途切れることなく続いていく。

夢見心地でステージを見やると、山口が着ていたコートがSTAR STAGEを駆け抜ける風に吹かれて舞い上がり、舞台はスモークに包まれ、そんな様子をバックライトが照らし出している。「神々しい」という表現はこういう場面で使うべきだろう。最後のダメ押しは、“目が明く藍色”。夢に見そうなぐらい現実離れした場面の連続の末、遂に恍惚のエンディングへ。サカナクションの5人は、10周年を迎えたバンドの足跡と未来の可能性を、最高の形で我々に見せてくれたのだった。

(阿刀“DA”大志)

セットリスト

1. 新宝島
2. アルクアラウンド
3. 三日月サンセット
4. SORATO
5. ミュージック
6. 夜の踊り子
7. アイデンティティ
8. 多分、風。
9. 目が明く藍色

撮影=古渓一道