5.4 THU 19:30-20:30 STAR STAGE
UNISON SQUARE GARDEN

音楽の力のみで最高到達点へ。
初のトリで3人が示したロックの希望

ビバラ2日目のSTAR STAGE、トリを務めるのはUNISON SQUARE GARDEN。初のヘッドライナー出演だ。彼ら自身だけでなく、集まったオーディエンスも、運営側が彼らに託した思いはどこかで気付いているだろう。次世代のロックスターの座へと駆け上がりつつあるSuchmos、そして盤石のライヴを見せたサカナクションからバトンを受け取り、フェスの看板を背負い、この日を締めくくる役割を引き受けてステージに立ったわけだ。

で、彼らは何をしたか?ここがとっても感動的だったのだが、特別なことは何もしなかったのである。炎やレーザーのようなスペシャルな演出や特効は一切使わなかった。3人はただただ自分たちが歌い演奏する姿を見せた。MCも最後の1回のみ。曲の力、音楽の力だけで2万人を最高到達点まで持っていったのである。

SEの鳴り響く中3人がステージに登場し、まずはアルバム『Dr.Izzy』の1曲目“エアリアルエイリアン”を披露する。変拍子を大胆に取り入れたテクニカルなナンバーだ。そして「UNISON SQUARE GARDENです!」と斎藤宏介(Vo&G)がひと声告げて“シャンデリア・ワルツ”へ。そして“カラクリカルクレ”、“桜のあと(all quartets lead to the?)”へ。息もつかせず雪崩れ込むように次々と楽曲をプレイしていく。

それにしても圧巻なのは3人の演奏だ。斎藤は鋭角的なギターフレーズを次々と繰り出しながら息継ぎもほとんどせずに歌を連ねていく。田淵智也(B&Cho)はベースを振り回し、ステージ中を暴れまわる。鈴木貴雄(Dr&Cho)は中央でどっしり構え、荒馬のようなグルーヴを1ミリのブレもなく叩き出していく。点と点が絡み合う。

一人ひとりの演奏力が図抜けているから、3ピースバンドの発想を軽々と乗り越えるような楽曲ができる。その印象は、下北沢の小さなライヴハウスで初めて彼らのステージを観たときと全く一緒だ。もちろんそこからバンドも成長し、作品ごとに飛距離は増し、状況も変わったけれど、彼らの根っ子にあるものは不変だ。

そして、この日のライヴでとても印象的だったのは、鈴木、田淵、斎藤それぞれのソロから突入した中盤の“天国と地獄”が、とりわけ大きな熱狂を呼んでいたこと。

決してシングルカットされた曲ではない。タイアップがついたわけでもない。けれど、イントロから大歓声が上がり、沢山のお客さんが飛び跳ねて踊っていた。ぐらぐらと床が揺れていた。

「UNISON SQUARE GARDENというバンドを線で理解してもらうために必要な手札」。かつて僕が話を聞いたとき、田淵は、この曲についてこんな風に語っていた。アルバム『Catcher In The Spy』がリリースされた時のことだ。「次の10年を楽しくやるためのいい手札」と言っていた。

そうか。

「ロックバンドは、楽しい」

これは彼らの1stアルバム『UNISON SQUARE GARDEN』のCD帯に書かれたキャッチコピーだ。彼らはずっとひとつの信念を貫いてきた。だからこそ進む道がブレることは一度もなかったわけだ。

終盤は “オリオンをなぞる”から“ガリレオのショーケース”へ。鈴木はTシャツを顔に被りスティックを回し、田淵はハイキックを決めステージに寝そべる。とにかく一瞬たりとも休まず、全身全霊で弾きまくる。それをちらりと目にやった斎藤が思わず笑みを浮かべる。楽しくてしょうがない。そういう感覚がステージ上にあった。それがオーディエンスにそのまま興奮として伝わっていた。そのことが感動的だった。

「みんなそれぞれ好きなバンドがあると思います。でも、僕からひとつお願いあって。明日からも好きなバンドの音源を聴いてください。そして、どうかワンマンライヴに行ってください。どうかこれからもロックバンドをよろしくお願いします」

この日唯一のMCで斎藤はそう語った。そして、残り1曲、アンコールもやらないと告げて“シュガーソングとビターステップ”。この日一番の盛り上がりだった。3人がステージを降りる時の充実した顔、そして汗だくになりながら笑顔で帰っていくお客さんの顔。それが何より説得力を持っていた。

(柴 那典)

セットリスト

1. エアリアルエイリアン
2. シャンデリア・ワルツ
3. カラクリカルカレ
4. 桜のあと(all quartets lead to the?)
5. mix juiceのいうとおり
6. チャイルドフッド・スーパーノヴァ
7. instant EGOIST
8. 天国と地獄
9. オトノバ中間試験
10. オリオンをなぞる
11. ガリレオのショーケース
12. シュガーソングとビターステップ

撮影=古渓一道