VIVA LA ROCK 2018

5.5 SAT 18:45-19:35 VIVA! STAGE
銀杏BOYZ

この宇宙で最も偉大な表現者、それが峯田和伸だ
決死の覚悟で人間賛歌を絶唱したひとりの男に称賛を

開演前から獣のような雄叫びを何度も何度も上げる、頭を丸めた峯田和伸がステージに立っている。リハの段階でもうオーディエンスは息を飲んで次の言葉を待っている。これこそが銀杏BOYZのライヴだ。峯田和伸の音楽だ。幾年月が経とうと彼の音楽が持つ緊張感にほころびはない。そんなただならぬ気配が会場中に充満する中、VIVA LA ROCK 2018のVIVA! STAGE、その大トリのステージが始まった。

うっすらと明かりが点るステージにひとり立ち、「照明さん、あんまり雰囲気作るバンドじゃないので明るくしてください」と笑いを誘った峯田だが、演奏が始まった瞬間にすべての人間が押し黙った。1曲目の“生きたい”があまりにも凄絶。情念を滲ませるようにアコギを弾き、瞳孔が開き切ったような顔で声を震わせる。そしてこの世の矛盾を嘆き、神に盾突くような声で叫んだ「ベイビー!」という言葉と苦悶する表情と、そのままアコギを手放しステージに倒れ込んだ姿――そんな人間を形容する言葉がこの世にあるのか。

そうして多くの人間が言葉を失いったままステージを見つめる中、ハイライトはいきなり訪れる。照明がステージを照らし、その瞬間に響くバンド・サンサンブルとマイクを握り潰すように歌う<あなたには愛する人はいますか>という言葉。その壮観さにフロア中が凍りつく。その間彼はマイクで額を殴打しながら祈るように跪き、悶絶したように身体をよじりながら、ヒステリックな音を上げるバンドの音が峯田の悲痛さとシンクロするように爆音を轟かす。これ以上にひとりの人間の魂を再現し尽くした音楽があっただろうか。2015年のVIVA LA ROCKのTSUBASA STAGE、たったひとりで銀杏BOYZとしてステージに立った際に弾き語りで初披露した “生きたい”が、この日はバンドによる至高の轟音と共に響きわたっていた。

続く“NO FUTURE NO CRY”ではステージを飛び出し人の波の中へと飛び込み、フロアに立ったまま歌うことをやめない。もはや観客と同じ高さで歌っている。この歌を歌った後、「どんどん僕を罵倒してくれてかまわないです。こういう場でしか言いたいことを言えなかったり、普段発散することができない人はどんどん僕にぶつけていいから」と語る人間が、まずはゼロ距離で歌ってみせているのだ。

「――悲しい事件が世の中にはたくさんありますけど、悲しい出来事が世の中にはたくさんありますけど、俺はラヴソングがある限り救われるんです。ラヴソングがある限りみんなに会いに行くことができるんです」と語って始まったのは“恋は永遠”と“骨”。昨年リリースしたラヴソング達である。その間に口にした「だから僕は60歳になっても歌っていきます」という言葉がこれ以上なく頼もしく、その後も常軌を逸したテンションで“星に願いを”、“SEXTEEN”を絶唱。そして、この日の峯田は最後まで言葉で何かを託そうとしていたように思う。

たとえばあなたが何か間違いを犯してしまったとして、でも俺は、あなたが泣くのなら、あなたがずっとそのままでいるのなら、あなたのやり方をこの歌で肯定しようと思います。あなたはたったひとつ、あなたはたったひとつ――そんな言葉を口にして歌ったのが“BABY BABY”で、そして彼は歌いながらも話すことをやめない。「これ(この曲で歌っていること)は歌詞じゃない。これは歌詞ではなくて、当時本当にそう思ったんです。<抱きしめたい>と思ったんです。この曲を作った時、愛しい人なんてひとりもいなかったのにそう思ったんです」と語り続ける――もう歌もMCも関係ない。全部が音楽。峯田の口から出るものは、よだれも含めて全部音楽なのだ。そんなひとりの人間が音楽と同化するような、一瞬たりともステージから目が離せないライヴがアンコールの“エンジェルベイビー”で終わった。間違いなく、この場にいた全員がこの音楽に心の底から震わされたことだろう。

セットリスト

1. 生きたい
2. NO FUTURE NO CRY
3. 恋は永遠
4. 骨
5. 星に願いを
6. SEXTEEN
7. BABY BABY
EN. エンジェルベイビー

撮影=釘野孝宏 テキスト=黒田隆太朗