VIVA LA ROCK 2018

5.4 FRI 17:40-18:15 CAVE STAGE
赤い公園

輝かしい未来への予感に満ちた
赤い公園の新たなる旅立ち

2017年8月31日を持って、結成当初からのメンバー・佐藤千明(Vo)が脱退した、赤い公園。津野米咲(G&Cho)、藤本ひかり(B)、歌川菜穂(Dr&Cho)の三人体制となって以降は、それぞれがヴォーカルを担当するなどの変則的な編成を試みてきた。しかし、改めて新しいヴォーカリストを迎え、再出発することを発表。この日のステージが、そのお披露目となった。

期待と不安、その両方が入り混じった緊張感で張り詰めたCAVE STAGEに登場した赤い公園。ノイズの嵐の中からピアノの響きとともに、力強くも澄んだ歌声が響き渡る。1曲目は“風が知ってる”だ。青い照明がゆっくりとステージの上に立った四人を照らし出すが、ヴォーカリストの顔は逆光でいまだ見えない。しかし、そのみずみずしい歌声は赤い公園のバンド・アンサンブルの中で、違和感なく鳴っている……津野はライヴ前にSNSで“腑に落ちる存在”と新ヴォーカリストを説明していたが、まさにその言葉がしっくりとくる説得力のある歌声だ。

「赤い公園です。よろしくお願いします!」と、一言放ち、次に演奏されたのは“闇夜に提灯”。赤い公園らしい、ユーモアとポップネスが爆発するロックンロールを力強く歌い上げるニュー・ヴォーカリスト。ようやく、その顔が明らかになる。赤い公園に新しく加わったヴォーカリストは、2月に解散したアイドルグループ、アイドルネッサンスのメンバー・石野理子(Vo)だった。ステージ・パフォーマンスも元アイドルなだけあり、堂に入っている。<want you>をオーディエンスに歌わせ、満足げな様子。初々しさもありながらも、すでにバンド・アンサンブルに馴染んでいる。

「改めまして、私たち、赤い公園です。私のことを何者だと思っている方もいらっしゃると思いますが、石野理子と申します。17歳です」と、自己紹介する石野の年齢にどよめきが起こる。若い……。「私は2月末までアイドルネッサンスというグループに所属していたのですが、今日は新体制ということで新曲を披露したいと思います」というMCの後に演奏されたのは新曲“スローモーションブルー”。1月に立川バベルで三人体制で行われたライヴでも演奏された。この曲は藤本と津野によるもの。キュートでキラキラとした魅力の石野の歌声が光り輝く、ポップなロックンロールだ。津野のギターが青い照明の中、水を得た魚のように唸りを上げる。

4曲目に演奏されたのは『純情ランドセル』に収録された“Canvas”。前任の佐藤のヴァージョンでは、血の滲むような熱唱が耳を引きつける壮大な楽曲として鳴っていたが、石野の声で聴くともっとパーソナルな孤独な少女の切なる心の叫びとして聴こえる。アイドル的な歌唱とは異なる、楽曲世界観を忠実に再現し、立ち上げようと試みる石野の絶唱にポテンシャルとロックバンドで歌うことの苦闘を感じ取った。しかし、初ライヴでこのパフォーマンスならば、今後、素晴らしい熱唱を聴かせてくれることは間違いないだろう。

石野のポテンシャルには続く“最後の花”でも、魅せられた。外連味のある楽曲をキュートに歌いこなす石野。そもそも津野の作る楽曲には、歌謡曲やアイドル曲的な要素がたぶんに含まれているが、そのキッチュかつラディカルな側面が石野の歌声でより増幅されて聴こえてきた。ステージングも、どこかまだアイドル然としていたものの、“絶対的な関係”のようなロックナンバーでは堂々たる様子でオーディエンスを煽り上げる。その様子を嬉しそうに見つめるメンバーの姿が印象的だった。

「早いもので次の曲が最後の曲になります」という石野の言葉に「えー!」と観客は大きな落胆の声が湧く。嬉しそうに「ありがとうございます。今日が初お披露目だったんですけど、最後まで皆さん楽しんでくださって、ありがとうございました! 赤い公園でした!」と、オーディエンスに感謝の意を述べた赤い公園。ラストは“NOW ON AIR”。津野、藤本、石野の三人はステージ前まで出てきてオーディエンスを煽り倒す。ステージを駆け回りながら歌う石野を、津野と藤本が挟み、可愛がるようなそぶりを見せるユーモラスな一幕もあった。最後は全員で手を繋いで、この4人の門出の日を見届けてくれたCAVE STAGE の観客たちに一礼。今一度、日本中に赤い公園の音楽を鳴り響かせる━━そんな決意のこもった、輝かしい未来への予感に満ちた旅立ちのライヴだった。

セットリスト

1. 風が知ってる
2. 闇夜に提灯
3. スローモーションブルー
4. Canvas
5. 最後の花
6. 絶対的な関係
7. NOW ON AIR

撮影=小見山 峻 テキスト=小田部仁