VIVA LA ROCK 2018

5.4 FRI 13:20-13:55 CAVE STAGE
パノラマパナマタウン

次世代のロックンローラーとしての矜持
パノラマパナマタウンの新たなる旅路

Beastie Boysの“Sure Shot”の出囃子と共にCAVE STAGEに現れたパノラマパナマタウン。VIVA LA ROCKには3年連続で出場している。今年1月にはEP『PANORAMADDICTION』をリリースし、メジャー・デビューを果たした彼ら。名実ともにどんどん力を増している彼らだが、同時間帯にSTAR STAGEではVIVA LA J-ROCK ANTHEMSがライヴ中という、なかなかシビアなシチュエーション。……しかし、パノラマパノマタウン、尋常じゃなかった。VIVA LA ROCKの歴史にも必ず記録されるであろう、反骨の精神をむき出しにした凄まじいライヴをCAVE STAGEに刻みつけた。

まず、自己紹介がわりに1曲目に彼らがドロップしたのは“PPT Introduce”。曲名の通り、神戸出身である自分たちの出自や今日のライヴにかける想いを織り込みながら、高速でフロウを刻んでいく岩渕想太(Vo&G)。ロックンロールやヒップホップ、ポップスのいいとこ取り……というよりも、多種多様な音楽を並列で聴くことが可能になった、今という時代にハイブリッドで進化した独自のポップ・ミュージックを素直な感性で鳴らしている。

「35分のステージ、やりきりたいやつ手を上げろ!」と、すでにヴォルテージがマックスに達した観客を煽りに煽り、始まった“世界最後になる歌は”。浪越康平(G)の切れ味鋭いギターのカッティングと詰め込みすぎなほど情報量過多なフロウが、フロアを激しく揺らしていく。曲の途中で、岩渕は客席にダイヴ。観客達にリフトされながら、やる気満々のMCを言い放つ。

「みんな、俺たちに少しでも期待してここに来てくれたと思うんだけど、その期待を超えるライヴをやります! 大きなステージでは人気者達が集まって、すごいステージをやってますけど。その人たちが束になっても敵わないライヴをここでやってみせます!」

マイクを使わずに地声で、強い想いを観客と共有した岩渕。<世界最後になる歌は こんなもんでは伝わらないかもしれない/世界最後になる歌は こんなもんでは伝わらない>という一節を、オーディエンスと共にアカペラで熱唱し、さらに限界を超えて会場の熱を高めていく。

“リバティーリバティー”では、浪越、田野明彦(B)、田村夢希(Dr)が奏でる有機的なバンド・アンサンブルの上で、自由自在にラップを放ち遊びまわる岩渕。各パートのソロ回しでは大きな歓声がフロアから湧く。跳ねるビートとハードでヘビーなギターサウンドに、自然と体が動きだす。新世代のロック盆踊りとでも言えばいいだろうか、オーディエンスのジャンプがCAVE STAGEをシェイクする。ここで、岩渕がハンドマイクからギターに持ち替え“マジカルケミカル”を披露。パノラマパナマタウンのロックなモードを存分に見せつける。浪越のギターソロが、CAVE STAGEの暗闇を切り裂いていく。

「3年連続呼んでくれて、本当にありがとうございます。今日も前と同じステージの上に立って、すごく嬉しい気持ちはあるけれど、それと同じぐらい悔しい気持ちもあります。VIVA LA ROCKに初めて出た時、フェスなんか出たこともなくて。右も左も分からないままで。俺はその時『もっとデカいステージに行きます!』って言ったんですけど、正直、その時は全然思ってなかった。去年も同じこと言って……今は心から俺らはもっとデカいステージでできるバンドだと思ってます。最初は冗談だったかもしれないし、ハリボテだったかもしれないけれど、今は心の底からそう言えます!」

4曲目“ラプチャー”の前のMCで岩渕が放った心の底からの熱い言葉にフロアから巻き起こる拍手。その想いの強さを感じ取ったのか、いつまでも拍手が鳴り止まない。そんなパノラマパナマタウンが歩む旅路を歌った楽曲“ラプチャー”はまさに、この日のハイライトだった。ほの青いシンプルな照明の中、熱量たっぷりに奏でられる、この決意の歌は切実に鳴り響いたのだった。

「STAR STAGEもCAVE STAGEも変わりないことを証明するために、今、ここに立っています。知名度も人気も関係ねぇ! スターが立っているところが、STAR STAGEだ!」——俺たちが次世代のロックンロール・スターだ、というおいなる宣言と受け取ってもいいだろう。続いてプレイした、キラーチューン“MOMO”では、そんな彼らのあふれんばかりの思いが爆発する。「ビバラで一番、カッケェギタリスト、浪越康平!」のコールに導かれて、浪越が叩きつけたギターソロに会場は沸き立つ。

その熱を冷まさぬまま、最後に披露されたのは“フカンショウ”。忸怩たる思いや、ままならぬ日常を吹き飛ばす鋭い音と言葉に満ちた、反骨精神の塊とも言えるだろう、この楽曲。暴走寸前のリズム隊と、グランジ感のあるギターサウンドが荒れ狂う台風のようなグルーヴを巻き起こして行く。バンドとしての実力を十二分に証明しただけでなく、自分たちの音楽が鳴っている、その場所こそがメインステージなんだという、次代を作って行くアーティストとしての矜持をしっかりとVIVA LA ROCKの舞台に刻みつけた彼ら。「今日、このステージを一生忘れねぇぜ! ありがとう!」。そうシャウトして、CAVE STAGEを去った彼らは、きっといつかもっと大きな姿でVIVA LA ROCKに現れるだろう。それは、もはや虚勢でもなんでもない、彼らが誓った「未来」なのだ。

セットリスト

1. PPT Introduce
2. 世界最後になる歌は
3. リバティーリバティー
4. マジカルケミカル
5. ラプチャー
6. MOMO
7. フカンショウ

撮影=小見山 峻 テキスト=小田部仁