VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 14:55-15:40 STAR STAGE
SHISHAMO

貫禄と余裕と安定のパフォーマンス。
まだまだ末恐ろしいSHISHAMOの未来は何処だ。

着実に一歩一歩、成長の階段を登っているSHISHAMO。ここビバラにおいても、STAR STAGEに名を連ねていることが当然だと感じるまで、この3ピースは人気ロックバンドとしての地位を確立した。その反面、3人の佇まいには驚くほど変化はない。そこが彼女たちが多くの人に愛され続ける理由のひとつだろう。たたたっと一人ずつステージ中央へ駆けてきて、フロアに向けてペコリとお辞儀をする姿はまるで新人バンドのようだ。まあ、宮崎朝子(Vo&G)は悠然と歩いてきたが。

しかし、ライヴとなると別の話だ。グルーヴィなベースラインとファンキーなギターフレーズに導かれて始まった“BYE BYE”から貫禄たっぷりのプレイを見せつける。以前はSHISHAMOらしい「味」として存在していた音と音の隙間なんてもうない。複雑なフレーズや手数に頼らずとも、3人は長い時間をかけてアンサンブルを培い、極太のサウンドを手に入れたのである。夏フェスのテーマ曲と言えばこれ!というレベルにまで成長した“君と夏フェス”だって、軽やかなポップソングというよりも渋味すら感じる骨太なロックチューンへと様変わりしている。もしかしたら、この曲は元からこういう音を狙って作られたのかもしれないと思うぐらいだ。

「ビバラロック!」「ビバラ!」「200レベル!」「400レベル!」「男!」「女!」と延々に続く恒例のコールレスポンスで場の雰囲気を確認したあとは、「(今年のビバラに)お目当てのバンドマンがいる女に捧げます」と“バンドマン”をプレイ。これは1stアルバムの収録曲だが、今日は“水色の日々”、“ドキドキ”、“好き好き!”など、比較的新しめの楽曲を貪欲にセットリストに組み込んだ。

サウンドだけでなく、宮崎のボーカルも存在感を増している。彼女の声に色気を感じた『SHISHAMO 2』の頃も驚いたが、今の彼女の声には凄みも加わった。言葉の頭で少しだけがなる歌唱によって歌詞の深みが増す場面もあった。“きっとあの漫画のせい”の<笑わせないでよ>という一節もぞくりとする歌唱で魅せた。

勘違いしがちだが、たくさん手が上がっていればいいライヴということではない。みんなが踊っていればいいライヴということでもない。何もせずにただ耳を傾けていたくなるライヴだって素敵だ。そういった意味で、聴衆の目を釘付けにし、じっくりと聞かせた“水色の日々”は名演だった。その一方で、タオル回しを煽る“タオル”では、宮崎がこの日のために描き下ろしたアニメーションがスクリーンに映し出され、なんとも胸キュンなポップ空間を演出。バンドの技術の幅が広がれば広がるほど、こういった演出が映える。ギャップ萌えだ。

かつては、10代の普通の女の子たちがロックバンドをやっているという微笑ましさがあったが、今はそんなことは全く思わない。20代前半にしてこれほどまでの貫禄と余裕を身に着けた彼女たちは、この先一体どこまで行ってしまうのだろうか――。

セットリスト

1. BYE BYE
2. 君と夏フェス
3. バンドマン
4. 水色の日々
5. きっとあの漫画のせい
6. タオル
7. ドキドキ
8. 好き好き!
9. 明日も

撮影=古溪一道 テキスト=阿刀“DA”大志