VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 15:40-16:20 VIVA! STAGE
SKY-HI "RAP PHENOMENAL STAGE"

SALU、KEN THE 390、R-指定、ぼくりり、亀田誠治が参加
時代が必要とした「ロックフェスのラップステージ」

2年連続のVIVA! STAGE出演となるSKY-HI。昨年は自身のバンドSUPER FLYERSと共にライブを展開したが、今年は3月にコラボレーションベストアルバムをリリースしたこともあり、ラッパーの先輩・後輩・盟友を迎え、「RAP PHENOMENAL STAGE」が行われた。

もはや言い尽くされた感もあるが、現在の海外で、特にアメリカで、かつてロックスターが担った役割を担い、ティーンの憧れとなっているのはラッパーであり、メインストリームのチャートを席巻しているのはヒップホップである。ここ日本では近年のフリースタイルブームによってラップに注目が集まったものの、カルチャーとしてのヒップホップが音楽シーンで新たな文脈を作り出すことができるのかは、今年が重要だと考えられる。

そこで鍵を握るであろう一人が、ヒップホップとロックに対してそれぞれに愛情を持ち、見てる方が心配になるくらいの熱量でその狭間を泳ぎ続けるSKY-HI、その人であることは間違いない。VIVA LA ROCKという「ロックフェス」において、「ラップ」をテーマにしたステージを行うこと自体異例に映るかもしれないが、もうそんなことを言ってるような時代ではないのだ。

まずはスポーティーなラッパースタイルで登場したSKY-HIが名刺代わりの高速ラップを披露すると、ステージに現れたのはコラボレーションアルバムを発表している盟友SALU。常にリアルタイムのアメリカのシーンを意識しつつ、日本語ラップの可能性を切り開いてきたSALUとのコラボは、やはり現行のマナーであるトラップを基調としたもの。「VIVA LA ROCK、行けるか?」という煽りによって、オーディエンスが一斉にジャンプした“No Chill”から“Purple Haze”という流れでは、808ビートを乗りこなす2人のフロウが冴え渡る。

「RAP PHENOMENAL STAGE、始めるぞ!」と改めて宣言して、“One by One”のトラックが流れ出すと、 まずはSKY-HIの旧知の先輩にあたるKEN THE 390が加わり、さらにはR-指定も加わって、4人での豪華なマイクリレーが行われる。SALUが抜け、「VIVA! STAGEをヒップホップで染めようぜ!」と号令をかけてからの“Shock”は、重めのトラックがロックファンにも馴染みやすい印象で、フロアからは一斉に手が上がっていた。

R-指定がステージを去り、SKY-HIとKEN THE 390の2人になると、「俺とKENさんが渋谷で客5人もいないときからやってる曲やるぜ」と“Critical Point”を披露し、“Turn Up”ではSKY-HIが再びスキルフルな高速ラップを叩き付けると、オーディエンスからは大きな歓声が。「最高の気分だぜ」と苦楽を共にした先輩を送り出すSKY-HIの表情からは充実の色が伺えた。

続いて登場したのはぼくのりりっくのぼうよみ。昨年のVIVA LA J-ROCK ANTHEMSにおいて共演し、“今夜はブギーバック”を披露したのも記憶に新しいが、その縁もあって2人が作り上げたのが“何様”。エモーショナルなSKY-HIのラップと、クールな表情のぼくりりの歌がコントラストを生みつつ、今のシーンをもっと面白くしたいと考える2人の根底にあるカウンター精神は、やはり共通するものがあると言えよう。

“Double Down”のシンセベースが流れ出し、最後にステージに迎えられたのは亀田誠治。この日唯一のベーシストの参戦だ。「今日はヒップホップステージじゃない。ラップがやべえことを教えるステージなんだ」と語り、「ロックフェスで勝つために作った曲」という紹介から、シンベが亀田の生ベースにチェンジ。2人がマイクとベースで向き合う異種格闘技戦な趣きが絵的に見ても相当にかっこいいし、ラップもプレイもかっこいい。曲の後半でトラックが消え、亀田のグルーヴィーなスラップベースのみでSKY-HIが延々フリースタイルをした場面は、間違いなくこの日のハイライトだった。

改めて今日の出演者に感謝を伝え、ラストは亀田がプロデュースを担当し、SKY-HIとはリアルな先輩後輩の関係にあるUNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介をゲストに迎えた“Diver’s High”。斎藤のパートはSKY-HIが歌い、特別な40分間が見事に締め括られた(欲を言えば、斎藤にも来てもらって、UNISON SQUARE GARDENのファンはもちろん、普段はラップを聴かないロックリスナーにももっと見てもらいたかった。それくらい、意味のあるステージだったと思うだけに)。最後にSKY-HIは「これでいいって思ったら、フルバンドでやってるライブにもいつか来てね」と言葉を残し、ステージを去って行った。

セットリスト

1. Tylant Island / SKY-HI
2. No Chill/ SKY-HI、SALU
3. Purple Haze / SKY-HI、SALU
4. One by One / SAKY-HI、KEN THE 390、R-指定、SALU
5. Shock / SKY-HI、KEN THE 390、R-指定
6. Critical Point / SKY-HI、KEN THE 390
7. Turn Up / SKY-HI、KEN THE 390
8. 何様 / SKY-HI、ぼくのりりっくのぼうよみ
9. Double Down / SKY-HI、亀田誠治
10. Diver’s High / SKY-HI、亀田誠治

撮影=釘野孝宏 テキスト=金子厚武