- 5.4 MON 15:40-16:20 TSUBASA STAGE
- 大森靖子

ポップな爪痕を残した
歌と叫び
どんな場所でも、居合わせた人達の胸に確実に爪痕を残す。観覧無料のエリアでもある屋外ステージ「TSUBASA STAGE」に登場した大森靖子が見せたのは、そんな彼女の真価が表れたライヴだった。
心地よい風の流れるステージに、まずはドレスを身にまといアコースティックギターを抱えた大森靖子が一人で登場。“PINK”を弾き語り、鋭く緊迫感ある声を響かせる。ぎっしりと集まった前方のオーディエンスが固唾を呑んで見守る中、「すべての音楽に、すべての芸術にありがとうと言いたい」と告げて“魔法が使えないなら”を続ける。
続いては、バンド編成を従え、ピンク色のマイクを握って歌った“絶対絶望絶好調”“イミテーションガール”、そして7月にリリースされる新曲“マジックミラー”へ。以前は刺激的なパフォーマンスがフェスでの大きなフックになっていた彼女だけれど、今はポップな楽曲の力を真っ直ぐに伝えていくモードに転じている。ミュージシャンとしての成熟を感じる。
「凄いね、見えてるよ。顔、わかるよ」とお客さんの様子を見回し「きったねえ顔だね、お互い」と笑い、「最高!」と笑顔を見せる大森靖子はとてもチャーミングだ。バンドメンバーも凄腕揃い。直枝政広(G/カーネーション)、畠山健嗣(G/H MOUNTAINS)、TATSU(Ba/LÄ-PPISCH)、奥野真哉(Key/ソウル・フラワー・ユニオン)という面々。ドラマーは先ほどソロでこのステージに立ったばかりのピエール中野だ。このメンツでツアーを回ってきただけあって、演奏の息もぴったり合っている。
「眩しいけど、私だけを見つけてください!」と披露した“ミッドナイト清純異性交遊”ではキュートな面を見せ、そしてラストは“音楽を捨てよ、そして音楽へ”。
「音楽は魔法ではない」と、大森靖子は言う。金切り声で、泣きそうな小声で、何度も繰り返す。その言葉が、だんだんと歌になっていく。絶叫に、バンドが奏でるメロウなグルーヴが寄り添う。
ステージの後ろには時折電車が通り抜ける。通行人もたくさん通りがかる。でも、思わず足を止めてしまった人はたくさんいただろう。射抜かれるような数十分だった。
(柴那典)
セットリスト
1. PINK
2. 魔法が使えないなら
3. 絶対絶望絶好調
4. イミテーションガール
5. マジックミラー
6. 君と映画
7. 焼肉デート
8. ミッドナイト清純異性交遊
9. 音楽を捨てよ、そして音楽へ