- 5.3 SUN 14:00-14:50 STAR STAGE
- くるり

風格と挑戦に満ちた
くるりの原点回帰
まずはセットリストを見て欲しい。
気づく人はハッと気づくだろう。最新アルバムからの“Liberty&Gravity”以外は、ほとんどが初期の曲、それも『さよならストレンジャー』『図鑑』という2枚のアルバムから選ばれた楽曲が中心のセットだ。
先日には来年に迎えるバンド結成20周年に向けたコンセプトライヴシリーズ「NOW AND THEN」の第1弾を行い、この2枚の再現ライブを開催したばかりの彼ら。VIVA LA ROCKで彼らが見せてくれたのも、いわば原点回帰のステージだった。
転換時のサウンドチェックも自ら行い、「どうもこんにちは、くるりです」と岸田繁(Vo&G)が告げてステージに登場。まずは“虹”から“東京”へと、スケールの大きな歌心を円熟の演奏で解き放っていく。岸田繁と佐藤征史(B)に加え、サポートメンバーのmabanua(Dr)、松本大樹(G)、ゴンドウトモヒコ(Euphonium, Flugelhornほか)を加えた5人編成。岸田や佐藤がプレイする楽器にも使い込まれた跡が刻まれ、豊かなアンサンブルと共に確かな説得力を持って伝わってくる。
鬼気迫る表情で歌った疾走感あるロックナンバー“青い空”をプレイし、「VIVA LA ROCKということで、普段はゆるゆるの音楽をやってるんですけど、ロックを用意してきました」とMCで岸田は語る。続いては「みんなで歌ってください」と“Liberty&Gravity”の軽やかなビートと旋律を繰り広げ「よいしょ!」という掛け声でオーディエンスと一つになる。
そして、くるりならではの挑戦的な展開を見せたのは、渦巻くようなサイケデリックなビートに乗せた“ガロン”。佐藤がコントラバスやマリンバを弾き、岸田がオルガンを弾いて、ゴンドウトモヒコがディジェリドゥーを吹き、10分近くのアブストラクトなセッションに突入していく。ゆらゆらと水中を浮遊するダビーな快感に包まれる。産休中のファンファンの「ありがとう」という声もサンプラーを通して届けられた。
しっとりとした歌でフロアの空気を鮮やかに彩った“ばらの花”に続いて、ラストは「それでは皆さん、よいゴールデンウィークをお過ごしください。ありがとう、くるりでした」と告げて披露した、“ロックンロール”。充足感に満ちたプレイが繰り広げられる。激しさとか勢いとかテンションというよりも、噛みしめてこみ上げてくる味わいのような、ロックバンドの熱を届けてくれた。
風格に満ちたステージだった。
(柴那典)
セットリスト
1. 虹
2. 東京
3. マーチ
4. 青い空
5. Liberty&Gravity
6. ガロン
7. ばらの花
8. ロックンロール