5.28 SAT 14:10-14:55 STAR STAGE
クリープハイプ

音楽と歌の力だけで心に爆風を吹かせた、
クリープハイプの真髄

いきなり尾崎世界観が「男女の間で一番エロいのは、寝起きのセックスだと思ってます」という言葉を放り投げると、観客は何かを察したようにギャーーー!という歓声を上げる。そう、クリープハイプでセックスの話となれば、“HE IS MINE”である。<セックスしよう>の大発声が生まれるこの曲で観客との一体化に性交、ではなく成功した後は、尾崎の歌がグングンと上昇していき、アリーナを一直線に切り裂くように、言葉と歌が痛烈に響いてきた。

欲しいものが諦め切れなくてダダをこねて転げ回っているような、赤子と冷静な大人の間をずっと忙しなく行き来しているような歌。その歌の表情が今日は特に多彩で、なおかつ直情がそのまま心めがけて飛んできて素晴らしい。刃物のような言葉の連打を“社会の窓”で浴びせかけたかと思えば、“オレンジ”では表情をポップに豹変させ、直立していられないほどの振動がアリーナに広がっていく。“HE IS MINE”を演奏した直後は「どうせ、この後は他のところに移動するんだろ。この場もセックスみたいなもんなんだから」とぶっきらぼうに言い放っていた尾崎だが、その表情は終始にこやかだ。続けた“エロ”や“憂、燦々”でも、曲に潜り込んでいくようなストイックなアンサンブルに思い切り身を委ねながら、歌と音とその歌だけを見つめて、純粋に曲の力だけでSTAR STAGEを包み込んで行くような瞬間の連続だった。

「盛り上がったほうが嬉しいし、楽しいんですけど、曲をちゃんと残したいと思って。だから、アコギを持ったからって、盛り上がれない曲だ、つまらない、と思うのは止めてください。一番覚えていて欲しいのは、曲だけなんです。バンド名はどうでもいいので、曲だけは覚えて帰ってください」という言葉を残して、最後に“傷つける”をしっとりと聴かせてステージを降りたクリープハイプ。ロックフェスとはただお祭り騒ぎをするだけの場ではなく、音楽と真っ直ぐに向き合い続けることによって、新たな心の景色を拓いていくためのものなのだという真髄を見せ続けるアクトだった。

(矢島大地)

セットリスト

1. HE IS MINE
2. 社会の窓
3. オレンジ
4. エロ
5. 憂、燦々
6. 二十九、三十
7. グレーマンのせいにする
8. 傷つける

撮影=岸田哲平