5.28 SAT 18:30-19:20 STAR STAGE
凛として時雨

初のVIVA LA ROCK出演で突き刺した
痛切なる轟音と、その核にある静寂

VIVA LA ROCKに満を持して初登場――というか、そもそもフェスに出演すること自体がかなり貴重なバンドというだけあって、スタート時間よりもかなり早い段階でアリーナにはもの凄い数の人が大挙して押し寄せた。その異様な興奮と熱気が充満したフロアを前に、深い音響とノイズが交錯するSEが停止すると、リヴァーブのかかったギターをTKが爪弾き、誰もが固唾を飲んで見守っているフロアの静寂を一気に切り裂くようにして“Who What Who What”で口火を切った。四方八方に飛ぶレーザーも相まって、痛切な叫びと美しいウィスパーを自在に行き来するTKの歌声がさらに鋭く耳に突き刺さってくる。まったく止まることのない雪崩のように繰り出された“I was music”、“想像のSecurity”では、腹を殴るようなリズムと深い音響のギターが絡まって生まれる音の壁にグルリと周囲を取り囲まれたような感覚に陥るほどだ。

空間も感情も覆い尽くすような情報量で思考と理性をぶっ飛ばしていく「時雨節」における代表曲達の連打にオーディエンスが拳を上げて応えていく中で、真っ白な世界で静かなヒーリング音楽でも聴いているかのような陶酔的な表情を浮かべる者も多い。狂気的な刺激とスリルが飛び交い、すべての思考をスパークさせていくかのような時雨の轟音の真ん中には、けれど、とても静謐で深遠な、とても美しい世界が存在している。“SOSOS”などはまさにその感覚が研ぎ澄まされている曲で、大観衆の中にいながらも周りの狂騒が消えてたったひとり荒野で時雨の音塊を浴びているかのような感覚になり、その美しいメロディに静かに深く心打たれた。
ピエール中野が「私、ライヴの時に埼玉出身だと言うのが定番なのですが、こうして初めて埼玉のフェスに出演できて光栄でございま~す!」とコミカルに挨拶を放ちつつ、先ほどのVIVA LA J-ROCK ANTHEMSでプレイした際にX JAPANのTシャツを着ていたことを誰にも触れてもらえなかったという小話を挟み観客にXジャンプを強いる――というMCタイムで会場は爆笑の渦に叩き落されるも、そのほっこり感と柔らかな空気を再度切り裂くように“abnormalize”“Telecastic fake show”“nakano kill you”と代表曲を連打。ラストは“傍観”で荘厳な音の壁を描き出し、3人は初のVIVA LA ROCKのステージを降りた。

(矢島大地)

セットリスト

1. Who What Who What
2. I was music
3. 想像のSecurity
4. DISCO FLIGHT
5. SOSOS
6. abnormalize
7. Telecastic fake show
8. nakano kill you
9. 傍観

撮影=岸田哲平