5.5 FRI 13:35-14:15 STAR STAGE
ACIDMAN

20周年を迎えた最強の3ピースバンド
今、再び、結成の地に降り立つ!

「この1分1秒は2度と戻ってこないから、最高の1日にしよう!」、大木伸夫(Vo&G)はそう言うと、テレキャスターの6本の弦を力の限り掻きむしった。VIVA LA ROCKの地元・埼玉県が誇る最強の3ピースロックバンド、ACIDMANの登場だ。1曲目は“to live”。 一度聴いたら忘れられない強烈なフックの佐藤雅俊(B)の歪んだベースが、浦山一悟(Dr)の奏でるステディなリズムと、大木の歌いながら弾いているとはとても思えないカッティングに濃厚に絡み、どこまでもグルーヴしていく。20周年を迎え、次の20年を歩き始めたACIDMAN。さすがに20年選手だけあり、今、この場にいる人々がこの場所で何を求めているのか、全てわかり尽くしている。

「どうも、埼玉県出身の3ピースロックバンド、ACIDMANです。ハットとキャップと謎の帽子でずっとやってます」。深淵まで潜っていくようなオルタナティヴ・ロック“アイソトープ”をプレイした後、大木は照れたような顔でACIDMANが結成20周年を迎えたことを、この日集まったオーディエンスに伝えた。「宇宙の単位でいうと一瞬ではあるんですが結成20周年を記念して、11月23日にさいたまスーパーアリーナでフェスをやります」。埼玉県の私立高校で出会った3人の少年達が、いつの間にか大人になり、そして、結成の地で自らの名前を冠したロックフェスを開く。あまりにも美しい物語に会場からは自然と拍手と歓声が巻き起こる。「ありがとう。VIVA LA ROCKを超えるフェスにしたいと思ってます(笑)」と、冗談めかしながらそう言った大木の笑顔の裏には強い想いが滲んでいた。

ACIDMANのロックンロールには生命の真理が描かれている。生きることの喜びだけでなく、死もまたその一部なのだということを彼らは描き出そうとしている。“式日”でスクリーンに映し出されたステージを見つめながら涙を瞳にためた女性の言いようのない表情、“最後の星”でギターのアルペジオと共に描かれる深い深い孤独、オーディエンスが力強く拳を掲げ生命が躍動する“ある証明”、そして、ラストに涙ながらに演奏された大木自身が祖母の死に際しパーソナルな想いを描いたという“愛を両手に”——彼らが鳴らす音は、我々が常日頃から抱えている抑えきれない生きることへの渇望を白日の下に晒しだすのだ。

「人はいつか死ぬ。幸せだったな、って言えるような生き方をしましょう。大切な人がいるのならその人を思い描きながら聞いてください」。“愛を両手に”を演奏する前、最後のMCでそう述べた大木。20周年という年月には沢山の別れと出会いがあったのだろう。これからの未来を見据えた、3人の目には強い光が宿っていた。

終演後には、結成20周年とフェス開催を祝うケーキがVIVA LA ROCKプロデューサーの鹿野 淳とMUSICA編集長の有泉智子からプレゼントされ、嬉し恥ずかしそうな表情を浮かべた3人。この日、STAR STAGEに響いた彼らを祝福する万歳三唱は、きっと晩秋のさいたまスーパーアリーナでは、もっと大きく力強い声で奏でられることだろう。

(小田部 仁)

セットリスト

1. to live
2. アイソトープ
3. 式日
4. 最後の星
5. ある証明
6. 愛を両手に

撮影=古渓一道