5.3 WED 16:20-17:10 STAR STAGE
クリープハイプ

貫禄の佇まいと攻めの姿勢を見せた
クリープハイプの真骨頂

「やりますか」

ふらりと、力の抜けた自然体の雰囲気でステージに姿を現した尾崎世界観は、そんな風に一言目を発した。そして「“社会の窓”という曲を歌います」と告げて、ギターを掻き鳴らした。ほんの一瞬のことなんだけど、その佇まいがとても格好よかった。4年連続のビバラ出場となるクリープハイプ。しかし、これまでとは一段違った余裕や貫禄のようなものが今のバンドに宿っていることを感じさせた。

序盤は“社会の窓”から“オレンジ”、そして「季節は少し早いけれど、夏の歌を」と“ラブホテル”を続ける展開。どれも『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』や『吹き零れる程のI、哀、愛』という4、5年前のアルバムに入っている曲だ。しかしブレイクの渦中にあった当時よりも、その少し後の気負いまくっていた時よりも、格段に歌と演奏がいい。フロアの後ろまで一杯になったお客さんが飛び跳ねて、アリーナの床が揺れる。

“ラブホテル”の途中で演奏を止め、尾崎は「ステージに立つ以上、みなさんの気持ちを代弁するべきだと思ってるんですよ。だから一つ代弁したいと思います。なんでyonigeとタイムテーブル被せたんだよ!」と語り、お客さんをニヤリとさせる。「メンヘラ代表バンドが被ってしまうという最悪の事態ですが、楽しんでいこうと思います」と告げて、続いては“憂、燦々”へ。さらには「盛り上がって、熱くなってきて、エロい気持ちになったので」と“エロ”を。前半は代表曲を惜しげもなく続けるサービス精神たっぷりのセットリストだ。

一方、後半は意欲的に変化を続ける「攻め」のモードに入った今のクリープハイプを見せる展開だった。ファンクのグルーヴを吸収した“鬼”に続けては、「バンド名なんてどうでもいいので、曲だけでも覚えて帰ってください」と、昨年のアルバム『世界観』では打ち込みで作られていたメロウ・チューン“5%”を生編成で披露。長谷川カオナシ(B)がエレピを弾くR&Bテイストの新機軸を情感たっぷりに歌い上げる。

さらにはリリースされたばかりのダンサブルな新曲“イト”で会場を揺らすと、ラストは「感謝の気持ちを伝えたくて真面目な歌を歌おうと思ったんですけど、セックスの歌しか残ってませんでした、ごめんなさい」と、“HE IS MINE”。「今日はテレビの収録が入ってるから絶対に言うなよ……いや、死ぬほどデカい声でお願いします」から、歌詞の一節「セックスしよう」をフロアの全員が叫んで大団円。

「ありがとう」

そう一言告げて、尾崎世界観はステージを降りた。その去り方も、なかなか粋だった。

(柴 那典)

セットリスト

1. 社会の窓
2. オレンジ
3. ラブホテル
4. 憂、燦々
5. エロ
6. 鬼
7. 5%
8. イト
9. HE IS MINE

撮影=古渓一道