5.4 THU 18:40-19:30 VIVA! STAGE
Gotch & The Good New Times

一人ひとりが自由に体を揺らす
この日一番幸せな空間がそこにはあった

盟友ストレイテナーの後を引き継ぐ形で、VIVA! STAGEのトリを飾るのはGotch & The Good New Times。まだASIAN KUNG-FU GENERATIONはVIVA LA ROCKに出演がないので、Gotchにとってはこれが初のVIVA LA ROCKということになる。

揃いの白シャツを着た7人がステージに現れ、1曲目は“Paper Moon”。ゆったりとしたループに身を委ねていると、井上陽介(G)のサイケデリックなギターが空間を切り裂いて行く。井上は“Good New Times”でペダルスティールを、“Tokyo Bay”ではバンジョーを演奏するなど、八面六臂の活躍っぷり。また、この日YeYeの代役として参加していたアチコ(Cho)も大きな動きでタンバリンを打ち鳴らし、場の盛り上げに大きく貢献していた。

「みんな自由に踊って帰ってください」と挨拶をすると、ゆったりとしたグルーヴにスクラッチが絡む“Wonderland / 不思議の国”(ここでの井上はスライドギター)を披露。「(同時間にSTAR STAGEで始まった)UNISON SQUARE GARDENに行ってもいいけど、できれば名残惜しそうにユラユラ揺れながら行ってね」と笑い、メンバー紹介に続いて“The Sun Is Not Down”へ。Gotchバンド屈指の名曲を、Gotch自身がユラユラと揺れながら歌い上げた。

「いつもどんなフェスでもガラガラで有名な俺のソロの物販で新しいシングルが売ってます」と冗談混じりに話して演奏されたのは、新曲の“Taxi Driver”。海外のR&B/ヒップホップを意識したであろうリズムアプローチはこのバンドにとって新鮮だが、mabanua(Dr)にとってはむしろ得意ジャンル。ゴスペルチックなコーラスも多幸感を生み、Gotchのステップはより軽快になっていく。“I Want You Back”をさらりと取り入れたアウトロもご機嫌だ。

ラストの“A Girl in Love”で再びサイケデリックなサウンドスケープを立ち上げると、Gotchはピョンピョンと飛び跳ねながらアコギをかき鳴らす。こんなにリラックスして楽しそうなGotchの姿が見られるのはソロならではで、アジカンとはまた違う喜びがある。

アンコールに応えてもう一度ステージに登場すると、「フェスが人気投票みたいになっちゃうのは嫌だよね。売れてる音楽が偉いわけじゃないし、売れてないからって卑屈になる必要もないし。次の曲はみんなも一緒に参加しているような気持ちで聴いてください。ホントにありがとう」と感謝の言葉を述べ、演奏されたのはバラードナンバーの“Baby, Don’t Cry”。切なくも美しいメロディーが広い空間に響き渡り、オーディエンスが自由に体を揺らす、幸せな空間がそこにはあった。

アイドルに憧れる地方の少女について歌った“Baby, Don’t Cry”は、言ってみれば「多様性」についての歌だ。今日のVIVA LA ROCKのラインナップは世代もジャンルも横断する幅の広いもので、日本のロックフェスがときに忘れがちな「多様性」が確かに存在したと思う。そして、住んでる場所も違えば、性別も年齢も活動規模も様々なメンバーが集ったGotch & The Good New Timesというバンド自体が、「多様性」の象徴のような存在だとも言える。やはり、大事なのは一人ひとりが自由に楽しむということ。それを改めて感じさせる、素晴らしいライヴだった。

(金子厚武)

セットリスト

1. Paper Moon
2. Good New Times
3. Tokyo Bay
4. Wonderland / 不思議の国
5. The Sun Is Not Down
6. Taxi Driver
7. A Girl in Love
EN. Baby, Don’t Cry

撮影=HayachiN