5.5 FRI 16:05-16:40 GARDEN STAGE
尾崎裕哉

熱きステージングと「今」の音楽性
僕が僕であるために、尾崎裕哉は歌う

熱い想いをたぎらせるパンクバンドが多数出演している今日のVIVA LA ROCKの中で、シンガーソングライターの尾崎裕哉が出演するのは一見場違いに見えるかもしれない。しかし、多くの人が知っての通り、彼の父親は80年代に若者の声を代弁し続けた偉大なるメッセンジャー、尾崎豊その人である。誰よりもパンクに生きた父親の存在を思えば、彼が今日出演するということは、むしろ必然なのだと言ってもいいかもしれない。

噂を聞きつけた多くの人が彼の姿を一目見ようと集まる中、1曲目に始まったのは裕哉のソングライティングの原点とも言うべき一曲“Road”。身振り手振りを交え、ギターを勢い良くかき鳴らしながら熱っぽく歌う姿はやはり父親譲りであり、幼少期には尾崎豊の音源を聴いて歌い方を真似ていたというだけあって、その歌声自体も父親に通じる部分がある。「両親に書いた曲をやります」と言って歌い始めたバラード“始まりの街”のせつなくも美しいメロディーも素晴らしい。

しかし、“Road”では<自分らしく生きるしかないんだ>と歌っているように、あくまで尾崎裕哉は尾崎裕哉。続く“つかめるまで”はタメの効いたミニマルなリズムが特徴で、海外における同時代のヒップホップやR&Bからの影響も公言する彼ならではの1曲。ファルセットを生かしたスムースなヴォーカルも印象的だ。また、間奏ではジョン・メイヤーを理想のミュージシャンとするだけあって、裕哉自身が味のあるギターソロをプレイ。アトモスフェリックなシンセを配した“愛か恋なんてどうでもいいや”はダンスミュージック的だったりと、曲調の幅は非常に広い。

「よっしゃまだまだ行くぞ!」と気合いを入れ直して、次に演奏されたのは「父親の年齢を超えたときの曲」だという“27”。裕哉版の“僕が僕であるために”とも言うべきこの曲は一転80年代らしさもあるロックチューンで、古き良き歌謡曲テイストと、現在進行形のブラックミュージックの融合は実に興味深い。ラストはアコギをバックに“サムデイ・スマイル”をラップも交えつつ歌い上げ、アウトロには“No Woman No Cry”を一節挟む洒落っ気も見せてライブは終了。この存在感。このオリジナリティ。ぜひ、もっと広いステージで観たい。

(金子厚武)

セットリスト

1. Road
2. 始まりの街
3. つかめるまで
4. 愛か恋なんてどうでもいいや
5. 27
6. サムデイ・スマイル

撮影=ヤオタケシ