- 5.3 WED 10:20-10:40 CAVE STAGE
- しまだかおり(ティーネイジサイタマ優勝者)
自然体でありながら、堂に入った歌声を披露!
パールのような淡く輝く未完の声がCAVEに満ちた
「しまだかおり in VIVA LA ROCK始めます」。照れくさそうにはにかむ笑顔と共に、軽く右手を突き出しながら告げられたその一言からステージは始まった。昨年「GET UP SAITAMA!」というタイトルでメンバーが埼玉県在住の中高生を対象に行われたオーディションが、今年は埼玉県在住は変わらず、年齢を19歳以下と広げた埼玉の10代のための音楽選手権「ティーネイジサイタマ」として新装開催。その優勝アーティストに、ビバラのオープニングアクトの切符が与えられたわけだが、見事栄えある優勝者に選ばれたのがこのしまだかおりである。
19歳という年齢相応の初々しい姿で登場した彼女だが、際立つのは歌い始めた途端に露われる音楽家としての堂に入った立ち振る舞いと、発声した瞬間に生まれるその声の引力。未来の一番星を一目見ようと駆けつけたオーディエンスの多くが、見守るように見つめていた視線から、歌が進むにつれて無心で彼女だけを照らすスポットのほうへと心ごと吸い込まれていく。<だけど愛し方がわからなくて/それでも君を愛していた>と歌う“日々”から、遠距離恋愛を歌った“遠い所から”へ。彼女のありのままの歌達は自身が弾くアコギの音色だけを頼りに、安定したピッチと少し曇りがかった声でおおらかに響き渡り、どっしりとした存在感を持ちながら会場を覆うように響く。もう既に「優勝アーティストとして立っている」という空気はなく、ステージにひとりで立ち、アコギ1本で凛とした姿で歌う様が伝えるのは彼女が「本物」であるという静かなオーラだけだ。「埼玉に住んでていいことはこのくらいだよね」というMCで笑いを誘う余裕も素敵である。
「たまたま優勝しただけかもしれないけど、こうやって今ここに立ってるから。精一杯歌って帰りたいと思います」という言葉には見栄も過信もなく、自然体のまま「一番大事にしている曲」だと告げた最後の“正直なところ”へ。来年の今頃はもっと当たり前にたくさんの人が彼女の名前を知っているのではないだろうか。4曲20分という短い時間だったが、そんな胸のすくような期待が膨らむのには十分な時間だった。彼女にとっても大舞台となる抜擢だったはずだが、同時にこのフェスにとっても新しい挑戦となっただろう、ティーネイジサイタマ優勝アーティストによるオープニングアクトしまだかおりのステージ。そこには才に恵まれた人間による歌を聴けたという、充足した満足感と余韻に満ちていた。
(黒田隆太朗)
セットリスト
1. 日々
2. 遠い所から
3. 陽射し
4. 正直なところ
撮影=釘野孝宏