5.5 FRI 16:20-17:10 STAR STAGE
Ken Yokoyama

2年振りに戻ってきたギターヒーロー。
パンクロックがSTARでビートを繋ぐ。

「いやぁ、いっぱい人が来てるね。VIVA LA ROCK、2年振りに呼んでもらいました。いい時間過ごしたいです。よっしゃ、今日のKen Yokoyamaの1曲目はKen Bandのテーマソングからやろうかな」と意表をついた“Let The Beat Carry On”からライヴが始まることを横山健は告げた。世代を越えてビートを、想いを繋げていくことを歌ったこの曲。観客とのコンビネーションもばっちりで、横山がモッシュピットに投げ入れたマイクを両手で力強く握った男子が、力み気味に<Let The Beat Carry On>と叫んだのを合図に演奏がスタート。最初に歌い出すのが客だなんておかしな話だけど、Ken Bandのライヴでは何が起こっても不思議ではない。曲中も、争奪戦の末にマイクを掴んだ名前も知らない誰かと横山の声が、不揃いながらも熱いハーモニーを奏でる。極論かもしれないけど、横山健のなんたるかはこの1曲に集約されていると言ってもいいんじゃないか。

OPERATION IVYの黒Tシャツを着た横山が次に奏でたのは“WALK”のイントロ。これもまた意外な選曲だ。ジャパニーズパンクを代表する名曲のカバーに観客の熱はグッと上がる。赤く照らされるモッシュピットは相変わらず地獄のような光景だ。

ところで、彼らのライヴは曲と曲の間でしっかりと時間をとる。全部が全部ではないけど、“I Won’t Turn Off My Radio”にしても、“Ricky Punks Ⅲ”にしても、しっかりとその曲を作った背景を説明する。各ブロックごとに一気に駆け抜けることだって別におかしくないし、その方がパフォーマンスに勢いもついて、観客の熱を冷ましにくい。しかし、彼はそうしない。彼はみんなに伝えたい。そして、繋がりたいと思っているんだ。

今日のライヴは全般的に暖かかった。「パンクロックっていいものでしょう?今日からあなた方だってパンクロッカーになれるんだぜ?」と笑いかけてプレイした“Punk Rock Dream”からも優しさがにじんでいた、

“Believer”で横山はまたピットにマイクを放り投げ、ライヴ冒頭と同じように観客に曲を先導させる。こうやってステージとモッシュピットが繋がり、この日の興奮がマイクを掴んだ“アイツ”から、明日、来年、次世代へと伝わっていくのだ。そして、2年前よりもちょっぴり優しく、そしてちょっぴり説教臭くなって戻ってきたギターヒーローの思いも、ピットを埋め尽くした観客一人ひとりの心に残っていく。ピースフルに鳴り響く“Pressure Drop”のスカカッティングを耳にしながら、そんなことを思った。

(阿刀“DA”大志)

セットリスト

1. Let The Beat Carry On
2. WALK
3. Can’t Take My Eyes Off Of You
4. I Don’t Care
5. Maybe, Maybe
6. If You Love Me
7. I Won’t Turn Off My Radio
8. Ricky Punks III
9. Punk Rock Dream
10. Believer
11. Pressure Drop

撮影=古渓一道