5.3 WED 15:30-16:05 CAVE STAGE
眩暈SIREN

仄暗いライヴハウスの底に咲いた痛みと祈りの花。
生への迫真の悲鳴が轟音に乗り聴き手の胸を射抜く

サウンドチェックの段階で、ステージは彼らの音楽が放つ暗く重たい色で満たされていった。福岡出身の5人組である彼らは、一昨年アルバム『或る昨日を待つ』をリリース。彼らが紡ぐ廃墟の中から微かな希望を求めるような歌は、簡単には生きる意味を見出すことのできない人間にとっての紛うことのなき真実なのだ。京寺(Vo)が綴る痛みに満ちた言の葉は怖いくらいの真実性を備え、それをメロディアスな轟音アンサンブルにしたため奏でる彼らは、バンド界における台風の目である。そんな着実に共鳴者を増やしている眩暈SIRENのVIVA LA ROCK初出場が実現だ。

“明滅する”で火ぶたを切ったライヴは“その嘘に近い”に繋がれ、気づけば退廃的でミステリアスな世界観でフロアは包み込まれている。その後、丁寧な挨拶を済ませてのインスト曲“「前口上」”は、これから訪れる嵐の前触れのように不気味さをフロアに持ち込み、シームレスに“偽物の宴”へ。彼らの音楽とシンクロする、5人の背後で幻想的に揺れるサイケデリックな映像も、このステージが異世界への入り口であるかのような錯覚を植えつけられることに一役買っている。また、時に問いかけるように歌う京寺の歌はただならぬ切迫感を持ち、ウエノルカが繰り出す絶叫、さらに孤独感や虚無感を増幅させるようなシアトリカルな演奏が、この音楽が持つ情緒を極限まで相乗させていく。<静寂の中で一人少しだけ/泣かせて欲しい>という言葉が、あてもなく空間を彷徨うようなミッドテンポの“ハルシオン”は、このアクトの中で最大の美しさを持って響き渡る。

「今日は楽しみだったけど不安で、こんなに人がいるんだと思ってびっくりしています。みんなからこうやって力をもらえて、また明日から音楽をやっていけるんだって思いました」(ウエノ)と丁寧に自身の気持ちを語り、ラストの“故に枯れる”で最後の祈りの咆哮へ。生きていく上で否応なく誰もが感じるであろう「生きづらい」という感覚を、艶やかなまでに詩的に、そして暴力的なまでに無垢に伝えるライヴを一貫して披露。ステージを見つめるすべての聴き手と1対1の関係を築き上げるようなその快演で、終演後も独特の空気を会場に残していた。

(黒田隆太朗)

セットリスト

1. 明滅する
2. その嘘に近い
3. 「前口上」
4. 偽物の宴
5. ハルシオン
6. HAKU
7. 故に枯れる

撮影=釘野孝宏