5.3 WED 14:25-15:00 CAVE STAGE
PELICAN FANCLUB

今にすべてをかけて
音楽で生きる覚悟を鳴らす

ファーストフルアルバム『Home Electronics』のリリースを控えるPELICAN FANCLUB。本作は、持ち前のドリーミーさと残響が響き渡るような深い世界観を保ちながらも、生きる歓びに満ち溢れたようなリズミカルな楽曲や、より開放的なロックナンバーが多く並び、PELICAN FANCLUBの新たな一面を見せる素晴らしい作品だ。初出場となるVIVA LA ROCKのステージは、そんな彼らの現在のモードがしっかりと反映されたライヴとなった。

「PELICAN FANCLUB始めます!」の一言とともに、バンドは一気に轟音を掻き鳴らす。1曲目は豪快でダイナミックなイントロが炸裂する“深呼吸”で幕を開けた。サビでの<ワン、ツー、スリー、フォー>の掛け声で、早くもフロアの熱は一気に高まっていく。続いて、夜霧の中を一気に駆け抜けていくような“Night Diver”のフィードバックノイズが鳴り響く。ステージ上に夜の高速道路を駆け抜ける映像が投影され、都会の雑踏を走りながら曲を聴いているかのような美しい演出は見応え抜群だ。さらに“Luna Lunatic”へと続き、『Home Electronics』の序盤と同様の流れで一気に前半を畳みかける。

「今しかないこの瞬間を、忘れられない1日にしていきましょう!」と、短いながらも力強いMCを放って後半戦へ。深遠なギターのイントロが彼方から響き始め、鋭く空気を切り裂いていく様に観客から大きな歓声が上がる。代表曲“Dali”だ。音を聴きつけた人達がフロア後方からどんどん集まってきて、CAVE STAGE全体がPELICAN FANCLUB独特の世界に浸されていく。そのまま一気に“記憶について”へ。エンドウアンリ(Vo&G)は「今しかないんだよ!」と、一瞬一瞬にすべてをかける姿勢を再び高らかに叫んでみせた。

ラストを飾るのは“花束”だ。「もっと多くの人に聴いて欲しい」、「伝えたい」という想いを強く持ってアルバムを制作したというバンドの演奏は、春の陽光のような温かいムードをCAVE STAGEへと連れてくる。「僕達は生きるために音楽をやっています。みんなも生きるために音楽聴いてるんでしょ?」、エンドウは最後のMCでそう問いかけた。彼らの作品とパフォーマンスには、自らの生きる姿勢、そして繰り返し叫んでいた「今しかない瞬間」のすべてが詰め込まれている。ミュージシャンにとって、ロックバンドにとって、音楽を鳴らすことはまさしく生きることである。PELICAN FANCLUBの「今を全力で生きる覚悟」までしっかり感じ取ることができた、力強く素晴らしいパフォーマンスだった。『Home Electronics』が多くの人の手に届くのが待ち遠しい。

(信太卓実)

セットリスト

1. 深呼吸
2. Night Diver
3. Luna Lunatic
4. Dali
5. 記憶について
6. 花束

撮影=釘野孝宏