5.4 THU 17:10-17:45 GARDEN STAGE
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)

アコギ一本で燃やした
叙情の香るロックンロール!

「こんなに集まってくれて、ありがとう。9mm Parabellum Bulletというバンドをやっている、菅原卓郎です」。VIVA LA GARDENのサッカーフィールドを埋め尽くしたオーディエンスを前にした菅原卓郎は、そんな感謝を述べた後、「さぁ」という掛け声と共に弾き語りライヴをスタートさせた。まず1曲目に披露したのは、9mm Parabellum Bulletの“The Revolutionary”。ブルースハープの哀愁漂う音色と菅原の朗々とした歌声が、昏れなずむVIVA LA GARDENの空に溶けていく。

「俺、VIVA LA ROCKに来るの初めてなんです」と語り始める、菅原。例年はゴールデンウィークはライヴをしないことになっているという9mm Parabellum Bullet。「ギタリストの滝くん(滝善充)の実家が農家なんで田植えを手伝わなきゃいけないらしいんですよね」と、嘘か本当かわからない理由を述べる。「もっと森っぽいところだと思ってたので、森の曲をやろうと思います」というさいたま新都心への大いなる勘違いを経て(これも嘘か本当かわからないけれど。そんな独特のユーモアも彼の魅力だ)披露されたのは、“黒い森の旅人”。ソロ弾き語りでは度々披露されている楽曲だが、野外で聴くとこの楽曲の哀切な響きがより切実に聴こえてくる。

「5月10日に『BABEL』というアルバムを出します。聴いた人は脳みそを吹き飛ばされるような作品だと思うので、楽しみにしてて下さい。その中から僕が作詞・作曲をした楽曲をやろうと思います」と言いながら披露したのは“ガラスの街のアリス”という楽曲。弾き語りスタイルでも9mm Parabellum Bulletのメンバーで演奏した時の完成形が見えるようなロックンロールが香る佳曲だ。菅原曰く「これまでとは全く違う」という9mm Parabellum Bulletにとっての新機軸となるであろう『BABEL』が楽しみになる、嬉しいパフォーマンスだった。

このステージの直前、STAR STAGEでVIVA LA J-ROCK ANTHEMSのゲストヴォーカルとして、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの “世界の終わり”を歌った菅原。「ここでカバーをやろうと思うんですけど、またミッシェルをやったら、どれだけ好きなんだよって言われると思うので。syrup16gの“Reborn”をやろうと思います」。弾き語りでは井上陽水の“氷の世界”などのカバーを演奏することが多かった菅原だが、この日は敬愛するsyrup16gの“Reborn”をカバー。現実とそこにある微かな希望の有り様に目を向けた稀代のロックアンセムを歌い上げた菅原の表情には、強い決意がにじんでいた。

急に吹き出した強い風によって、少し肌寒くなってきたVIVA LA GARDEN。日没も迫っている。「次で最後の曲です」と菅原が告げると、会場からは名残を惜しむ声が、あちこちから上がる。その声があまりにも切実で、もうほとんど奇声に近い。そんな熱狂的なオーディエンスとの別れを惜しむ様に最後に演奏されたのは、“Black Market Blues”だった。「バンドメンバーもいないから、手伝って欲しいんだ」という菅原の呼びかけに応えてギターリフを合唱するオーディエンス。9mm Parabellum Bulletのライヴさながらに拳を掲げ、手を叩き、声の限りに歌う。菅原はVIVA LA GARDENをアコギ一本で燃やし尽くし、そして颯爽と去っていった。

(小田部仁)

セットリスト

1. The Revolutionary
2. 黒い森の旅人
3. Lady Rainy
4. ガラスの街のアリス
5. Reborn
6 Black Market Blues

撮影=ヤオタケシ