VIVA LA ROCK 2018

5.5 SAT 12:40-13:15 CAVE STAGE
Age Factory

奈良が生んだ怪物はどこまで狂うのか――
憤怒と慈愛を激情的にまき散らし、CAVE SATGEを圧殺

凶暴性と危険度では日本中を見渡しても屈指だろう。開演前のリハで“SUNDAY”を披露すると、早くから駆けつけていたお客さんが「一番爽やかな曲始まる前にやっちゃったー」と笑いながらこぼしていたのが可笑しかったが、確かにその通り。“Yellow”で始まったライヴは、清水エイスケ(Vo&G)の猛り狂う咆哮がのっけから会場に轟く期待通りの爆演。終わってからもしばらく身震いが止まらない、そんな全身の毛穴が総毛立つような戦慄のライヴを観せてくれた。

破壊的なドラムと大蛇が蠢くようにうねるベースに乗せて、野太い声でこの時代に生きる意味を問う“RIVER”、ポストパンクとハードコアを掛け合わせたような、悲鳴を上げるようなギターが印象的な“Clean Up”を立て続けに披露。<とりあえず丸めて来い/にやにやしてんなよ糞が>という叫びにただただ言葉を失うが、そのテンションは一切落ちることがない。会場中を恐怖の底に叩き落すように新曲の“WORLD IS MINE”を投下。明滅する紅色のライトは彼らが抱える怒りを表すように鈍い光でフロアを照らすし、<WORLD IS MINE>(世界は俺のモノだ!)という叫びも息を飲むAge Factoryによる最新のハードコアだ。

そして何より、「去年もVIVA LA ROCKに出ました。向こう(別のステージ)もあるけど知らねえ。最高にぶっ飛ばしていくんで最後までよろしくお願いします」と言って始まった“Puke”だ。僅かに残っていた理性の糸が、遂にここで切れたと思った。ポエトリー調の前半部分では思うがままにエイスケの本心が溢れ出てくる。「誰かのルールに決められたようなバンドばっかりいるじゃねえか。しょうもねえ……ぶっ飛ばしてやるよ!!」(清水)と叫べば、「誰かに届くまでやる、最果てから。We Are Age Factory」、「クソバンドばっかで吐き気がする」と酩酊したようにポツリポツリと言葉を零していく。彼らの楽曲の中でも最も本能を剝き出しにする楽曲だが、この日は特に狂っていた。もう歌詞も語りも半分くらいは聴こえない。西口(直人/Ba&cho)のベースも増子(央人/Dr&Cho)のドラムも、会場を丸ごと飲み込むように爆発的な音圧でリズムを刻んでいく。もうとっくに感情が理性を超えている。そして聴く者の臓腑の底にまで音を突き差すような、そんな痛いくらいの熱気に満ちた3人の姿にオーディエンスは歓声を送るのだ。

「いただいた時間最大限やるんでよろしくお願いします。クソなんて言いましたけど、実際今日1日楽しんでください」(清水)と、初めてクールダウンしたのは終わりが近づいてから。「でも、今日(着てきた)Tシャツ柔道のやつなんで。(フェスって)そういうもんやと思うんですよ。闘いやと思ってるんで」(清水)と語ったエイスケのTシャツには、よく見ると「JUST SAY NO」と書いてある。ヤバい、マジでブレない。

「今日ちょっとテンション感おかしい。お前ら笑えー!」(清水)と、とうとう気がふれてしまったとしか思えないMCを挟み、彼らの中フォーキーな側面が表出される名曲“ロードショー”へ。普段の生活を愛しているからこそ叫ぶことをやめない、そんな清水エイスケだからこそ歌える慈愛のオルタナティヴ・ロックだ。そして最後の“Tours”、彼らの音だけが響き渡る薄暗い会場に照明が点った瞬間、多くの拳が上がっていたのに一層の興奮が押し寄せた。そう、1年中ライヴハウスを駆けずり回り、精魂尽き果てるようなライヴをこなしてきている彼らが負ける理由などないのだ。野に放たれた獣の如くCAVEを食い散らかしたAge Factory、彼らの灼熱のライヴに全霊の拍手を送りたい。

セットリスト

1. Yellow
2. RIVER
3. clean up
4. WORLD IS MINE
5. Puke
6. ロードショー
7. Tours

撮影=小見山 峻 テキスト=黒田隆太朗