VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 17:00-17:35 CAVE STAGE
Creepy Nuts

ベンチウォーマーからナンバーワンプレイヤーへ
「スポットライト」の下で見せつけた二人の覚悟

「VIVA LA ROCKいけるか!」の一言を放ち、前置き無しでフルスロットルでCAVE STAGEになだれ込んできたCreepy Nuts。サウンド・チェックでは、直前にゲスト出演したSKI-HIのステージでリリックを噛んでしまったとなぜか懺悔していた殊勝なR-指定(MC)。しかし、そんな失敗も何処へやら、ここは俺の土俵とばかりに初っ端の“助演男優賞”から切れ味鋭くフロウを畳み掛ける。昨年同様、パンパンに人で溢れかえったフロアのヴォルテージがどんどん上がっていく。綺麗に揃った「お・ま・た・せ!」のシャウトに「ばっちりやんけ、お前ら!」と満足そうな様子の二人。Creepy Nutsにとっては、VIVA LA ROCKは3年目。もはや、勝手知ったる現場といっても過言ではない。

しかし、今年のCreepy Nutsは根本的に去年とは全く「違う」のだ。4月に待望のメジャー・ファースト・アルバム『クリープ・ショー』をリリースし、いよいよ本格的にメジャーのフィールドで活動を始めたCreepy Nuts。この春、ラジオでも流れまくっていたアルバムからのキラートラック“ぬえの鳴く夜”、“紙様”を続けて、フロアに叩きつける。

これまで彼らは、圧倒的なラッパー、そして、DJとしての実力を持ちながらも自らがヒップホップアクトとしてアゲインストな状況にあること、そして、ルサンチマンをテーマに楽曲を製作してきた。新作『クリープ・ショー』もまたその文脈にあるのだが、このアルバムを期に彼らのモードは完全に変わっている。つまり、彼らはメジャーアーティストとして表舞台に立つことを受け入れ、「助演男優」としてではなく「スポットライト」を浴びることを引き受けたのだ。

MCでR-指定は出演者にもかかわらずガードマンに止められたことをネタにしていた。「KREVAさんだったら、ちょっと聴いてくれって言って。〈愛してんぜ、音色》ってやってわかってもらえるのにな。俺らも頑張ろう(笑)」と言っていたが、まさにKREVAも、アゲインストな状況をひっくり返して、ヒップホップというフィールドを超えて幅広いリスナーに受け入れられたスターの一人である。そして、Creepy Nutsにも手の届くところにもその未来はあるのだろう。

毎度恒例となっている“聖徳太子フリースタイル”では<二日酔い・顔パス・メロンパン・教員採用試験・ローストビーフ・さいたま>というワードを織り交ぜながら、フリースタイルを披露。何度もライヴで見てきたこの離れ業、R-指定だから絶対にやってくれるということはわかっているのだが、よく考えたら意味が通るようにきちんとリリックをその場で紡いでいくのはやっぱり人間業じゃない……。人間業じゃないのは、DJ松永のDJプレイもそうだ。2018年現在、未だ童貞ながら、驚異的な指さばきでCAVE STAGE・音楽の洞穴をかき回し、この上なく気持ちよくさせたDJ松永。プレイを決めて、ステージ後ろに下がって行くパフォーマンスも堂々たる様子。この二人、やっぱりこの一年足らずで風格がさらに増している。

「VIVA! STAGEで、日高さんのオーディンエンスの盛り上がり見ちゃったからな。このCAVE STAGEも盛り上げたいです! 俺が飛び跳ねろって言ったら、飛び跳ねてもらっていいですか?」という、R-指定の煽りに応えてオーディエンスは頭がオカしくなるほど飛び跳ねた“合法的トビ方ノススメ”。DJ松永の指、R-指定の舌、そしてオーディエンスの熱狂がセックスも、ドラッグもロックンロールさえも超えて、CAVE STAGEのヴォルテージを最高点にまで高めていく。

「我々、Creepy Nutsはメジャーでアルバムを発売しました。この作品には今までの自分たちを詰め込みました。このアルバムの最後の曲“スポットライト”には一歩前に進んでいくという想いが込められています。最初に外のステージに出させてもらって、昨年、前夜祭とこのCAVE STAGEに出て、今年もここに立っています。そうやって一歩一歩前に進んできた、俺たちの歩みをそして決意が込められた曲をぶちかまして、今日は帰ろうかなと思います」

というR-指定のシリアスなMCに続いて、最後に披露されたのは“スポットライト”。<I’m a No.1 player 元ベンチウォーマー>という歌詞にあるように、日陰から日向に出てナンバーワンプレイヤーとして勝負に乗り出すCreepy Nutsの覚悟を歌った楽曲は、VIVA LA ROCKの舞台で、切実に鳴り響く。R-指定の血の滲むようなラップ、そして、DJ松永の盤が焼け焦げるんじゃないかというほどのスクラッチに呼応して、オーディエンスも最後の力を振り絞って、拳を振り上げる。3年間という月日の中で、着実に、しかし虎視眈々とVIVA LA ROCKでも上り詰めてきたCreepy Nuts、来年はもっと大きなステージで圧倒的なパフォーマンスを見せつけて欲しいと心の底から願う、強い覚悟に満ちたステージだった。

セットリスト

1. 助演男優賞
2. ぬえの鳴く夜は
3. 紙様
4. 聖徳太子フリースタイル
5. DJ松永ルーティーン
6. 合法的トビ方ノススメ
7. スポットライト

撮影=小見山 峻 テキスト=小田部仁