VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 15:55-16:30 CAVE STAGE
King Gnu

2018年の今、鳴るべくして鳴ったロック
King Gnuが魅せた圧倒的なステージ

「ええぇ、もう、超ヤバくない? え、なに、ヤバくない?」——これは、PA卓の側で観ていた10代と思しきキッズたちの言葉。いや、そう言いたくなるのもわかる。今日のKing Gnuのステージは小細工なしの圧倒的な横綱相撲のようなライヴだった。東京藝術大学出身の常田大希(Vo&G)を筆頭として、豊富な音楽的なリファレンスを持ち、それでいて演奏能力も高いという、おばけバンドなのにもかかわらず、これ見よがしなプレイや楽曲は一切ない。

1曲目の“FLASH”からして、ド派手なフェス向きの楽曲というわけではないのに、フロアは異常なほど盛り上がっている。「大したことやってないですよー」というそぶりを見せながら、実はサラッとスリリングな掛け合いやプレイを入れ込んでくるから、一瞬足りとも気が抜けないのだ。気が付いたら、目と耳はステージに釘付けになっている。ロックバンド、そして、ポップスという枠組みの中でどこまで遊べるか……そんな余裕に溢れたクールなスタンスが憎い。

音楽的なセンスが高いだけでなく、“Tokyo Rendez-Vous”や“McDonald Romance”のように、2018年の東京のストリートの匂いを漂わせるリリシズムも彼らの魅力の一つだ。<眠れないこの街の/無意味なから騒ぎにはうんざりさ/トーキョー>(“Tokyo Rendez-Vous”)。斜に構えているわけでもなく、ただただ現実を冷静に見据え、「今」をどう楽しむかを考え、生きている。10〜20代の若者たちがKing Gnuの音楽に熱狂する意義と意味が、確かに彼らの歌詞の中には息づいている。

加えて、ロックンロールやパンクが内包する予想できないハプニング、暴発しそうな危なっかしさも楽しむことができるのがKing Gnuのズルいところでもある。昭和歌謡をあえてファンキーかつロックに解釈し直したような楽曲“あなたは蜃気楼”では、勢喜遊(Dr/Sampler)がドラムセットを離れ、なぜかステージ前方に登場。VIVA LA ROCKの主催者である鹿野淳の名前を呼び、探し出す。解釈に困るパフォーマンスだが、妙なドキドキ感がある。

「こんなにCAVE STAGEに集まっちゃって。裏のレキシは大丈夫ですかね? 僕たち、鹿野さんのことあんまり知らないので、飲みに行って仲良くなりたいです。後半も楽しんでいってください!」と、若手バンドならではのしっかりと反骨心を見せるMCも披露。続いてプレイされた“ロウラヴ”では、朗々と歌い上げる井口理(Vo&Key)の歌声が光った。井口の歌声のプレゼンスは本当に素晴らしいのだが、特にギターの常田とのツインヴォーカルとの相性がたまらなくいい。ソウルとセクシーさを感じさせる井口、そして、サグでパンキッシュな魅力のある常田の歌声のコンビネーションは本当に素晴らしい。オーディエンスも井口の煽りに応じて、シンガロングに参加し、会場は一気に一体感に包まれる。

新井和輝(B)のグルーヴィーなベースが冴え渡った“Vinyl”を経て、彼らが最後にプレイしたのは小雨降りしきる今日のような初夏の日にふさわしい“サマーレイン・ダイバー”。常田の熱のこもったヴォーカルにオーディエンスから大きな歓声が湧く。最後は会場全体を巻き込んでハンズアップした手を振りながら、ライヴは大団円を迎えた。テクニック重視のバンドにありがちな、置いてきぼりのライヴを良しとしないKing Gnuは新世代のロックンロールヒーローだとここで断言してもいいだろう。圧倒的な「今」感と、安定した演奏能力を兼ね備えたKing Gnuのスケールはとにかくデカい。来年はもっと大きなステージで、アゲインストと思われるようなシチュエーションでもライヴを見てみたい。それぐらいの凄まじい耐久度とポテンシャルを持った、末恐ろしいバンドだと思う。ライヴが終わった後も興奮冷めやらず、冒頭のキッズのように「King Gnu、超ヤバくない?」と、今すぐ、誰か友達に電話したい気持ちになった。

セットリスト

1. FLASH!!
2. Tokyo Rendez-Vous
3. McDonald Romance
4. あなたは蜃気楼
5. ロウラブ
6. Vinyl
7. サマーレイン・ダイバー

撮影=小見山 峻 テキスト=小田部仁