VIVA LA ROCK 2018

5.5 SAT 15:45-16:25 VIVA! STAGE
キュウソネコカミ

「ロックスターに俺だってなりてぇ!」
VIVA! STAGEに谺したキュウソネコカミの叫び

グッときた。感動、感動、加えて感動のステージだった。VIVA LA ROCK、皆勤賞のキュウソネコカミ。昨年のVIVA! STAGEのライヴでは「来年はSTAR(STAGE)に戻る!」と宣言して去っていったこともあり、彼らのことだから今年はさぞや恨み言を主催者の鹿野淳やVIVA LA ROCKに対してぶちまけるのだろう……と、想定していたのだけれど。本当にエモーショナルで、切実で、どこまでもポジティヴィティに溢れた、素晴らしいライヴを見せてくれた。

サウンド・チェックでは“ビビった”や、自身も出演しているタマホームのCMソングを披露し、グッとオーディエンスの心を掴んだ彼ら。1曲目は前置き無しで“5RATS”を、自己紹介がわりにフロアに叩きつける。続いて、披露された“ファントムヴァイブレーション”では、オーディエンスにハンド・クラップを要求。<スマホはもはや俺の臓器>と、会場中を巻き込み大熱唱。相変わらず、ステージングが本当にうまい。一気にVIVA! STAGEの空気をキュウソネコカミの独壇場へと変えていく。打ち込みのサウンドがディスコのムードを醸し出す“MEGA SHAKE IT!”では、オーディエンスに支えながら歌おうとするヤマサキセイヤ(Vo&G)。しかし、何度も崩れ落ちてしまう。「足腰弱いな、お前ら! 肉食ってんのか!」と、手厳しい一言をオーディエンスに向ける。

BRAHMANのTOSHI-LOWに「細美(武士)の歌があるんだって?」と、言われて書いた“TOSHI-LOWさん”、そして前述の細美武士(the HIATUS/MONOEYES)が作中に登場する“サブカル女子”を続けて披露したキュウソネコカミ。MCタイムに入ったところで、ほとんど心霊現象のようなフェスならではのハプニングが。つい先ほどまでスカパラのステージに出ていたTOSHI-LOWがただならぬオーラを放ちながら、ステージを通過(何も言わずに、本当にただ通過しただけ)。鋭い眼光でキュウソネコカミのメンバーを睨みつけ、去っていった。

「え? なに、幽霊? どういうこと? これ、コラボ……?」と、オーディエンス以上に狐につままれたような顔で唖然とするヤマサキに「これコラボっていうとか、お前、どんだけなんだ」と、ヨコタシンノスケ(Key&Vo)がツッこむ。6月にはBRAHMANとの2マンが予定されているという彼ら。「プロテインを飲んで、体と音楽の両方を鍛えつつ頑張ります」と、意気込みを語った。

TOSHI-LOWの登場に気合を注入されたのか、キュウソネコカミは前半以上に激しい演奏を立ち上げていく。“DQNなりたい、40代で死にたい”では、“MEGA SHAKE IT!”での雪辱を晴らすべく、ヤマサキが客席にダイブ。前方エリアを越え、後方エリアまで人の海の上を歩いていく。

「STAR STAGEに出られなかった悔しさと、(マキシマム ザ )ホルモンに客を取られた悲しさで、実はAメロから泣いてました! 俺はSTAR STAGEに立てなかったけど、ヒーローっぽくはなれます。今日、キュウソのライヴをみて、何かを感じて持ち帰ってくれて、明日から頑張ってくれることを真剣に祈ってる。本当はロックスターに俺だってなりてぇ! だがしかし、ライク・ア・ヒーローでも超嬉しいぜ! 俺たちをさらにヒーローっぽくしてくれぇ!」

人の海で大股びらきで崩れ落ちそうになりながらも、切なる想いのこもったMCを心の限りの大声でシャウトしたヤマサキの姿がオーディエンス達の心に火をつけた。続いてプレイされたポジティヴィティに満ちたダンス・チューン“ハッピーポンコツ”で、気が狂ったように激しく踊り出すVIVA! STAGEの観客達。いや、もうライク・アどころではなく、こんな景色を作れるのはロックヒーロー以外にいないじゃないか。「リアム・ギャラガー ロックンロールスター」と、プリントされたTシャツを身にまとったヤマサキの姿は神々しかった。

「自分の好きなバンドを大事にしてやってくれ。お前らが聴いたり、グッズを買ったり、ライヴを観たりすることで、好きなバンドは生き続ける」と、いう血の滲むような叫びに導かれて始まったのは、4月25日にリリースされたシングル『越えていけ/The band』に収録されている“The band”。バンドワゴンに乗って進み続けるロックンローラーとしての自分自身の決意と、ロック・バンドへの愛情とリスペクトを歌ったこの楽曲が、どこまでもエモーショナルだったこの日のキュウソネコカミのライヴを感動的に締めくくった。

キュウソネコカミはこの日、「また、VIVA LA ROCKのどこかのステージで会いましょう!」と、言って去った。ステージの大小関係なく、今、自分たちの想う切実な感情を音楽にのせて届けることの大切さを歌い上げた、彼らの表情は清々しく見えた。決して、自分を誤魔化さず、音楽を鳴らす。キュウソネコカミはこの日、バンド結成以来、貫き通してきたロックンローラーとしての矜持を今再び、VIVA LA ROCKの舞台で見せつけたのだった。

セットリスト

1. 5RATS
2. ファントムヴァイブレーション
3. MEGA SHAKE IT!
4. TOSHI-LOWさん
5. サブカル女子
6. DQNなりたい、40代で死にたい
7. ハッピーポンコツ
8. The band

撮影=釘野孝宏 テキスト=小田部仁