VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 15:50-16:25 GARDEN STAGE
ReN

等身大の歌と心でピースな景色を描く
ReNという歌唄いの真価が風に乗って舞う

アコギの音とループステーションを駆使し、独力でステージを作っていくシンガー・ソングライター、ReNのライヴが始まった。エド・シーランから影響を受けたまろやかな歌は、そよ風の吹くガーデンにはうってつけの音楽である。何より、その自然体でありのまま気持ちを歌に込めていく彼の音楽は、聴く者の心をそっと解放していったように思う。お酒を飲む者、ゆったり身体を揺らす者、食事を楽しむ者、そしてステージをじっと見つめて動かない者――彼の歌は音源よりもずっと自由に満ちており、心なしかいつもより跳ねるようなリズムには心地いい躍動感があった。

“Illumination”で始まり、かつて彼が暮らしていたイギリスはシェイフィールドの風景を歌った“Sheffield”へと続いていく歌が、繊細さと情熱の間で揺れるように感情の機微を伝えていく。アコギのボディをノックすることで生まれるリズムも彼の持つ人肌の体温を感じさせ、こうして彼は自分の中から自然と湧き上がってくる陽性のエネルギーを最大限に活かしながら、裸の言葉を真っ直ぐに届けていくのだ。「今週いろんなところでライヴしてきたけど、今日が一番盛り上がっているかもしれないです」と語る彼の表情は優しく、彼はこの音楽性と姿勢で全国のどんな場所にもひとりで立ち、一期一会を大切に彩る音楽を歌い続けるのだろう。

「ここに来る途中、この会場の近くにあるHEAVEN'S ROCKで以前悪いライヴをやって悔しい思いをしたのを思い出していました」と語っていたが、この日のライヴで浮かび上がってくるのは、彼のそうした過去の忸怩たる思いではなくあくまでも今日の舞台を大事に1曲1曲奏でていこうとする一音楽家の誠実な姿である。<もう心配いらないよ 僕が隣にいるから>という歌を強い発声で放ち、軽快なビートとつま弾かれるギターのメロに乗って確かに胸に迫っていく“Life Saver”は特に頼もしい。その後はメロウなラヴソング“What I’m Feeling”でしっとりとした時間を作り出し、“Aurora”で終演へ。初出場の歓びを語っていた彼の心情をそのまま表すような、ポジティヴなヴァイブスに満ちた空間をガーデンに作ったReN。僅か5曲の短いセットの中で、自身の音楽に対する姿勢も魅力も惜しみなく詰め込んだ等身大のライヴを披露した彼にあっぱれの言葉を贈りたい。

セットリスト

1. Illumination
2. Sheffield
3. Life Saver
4. What I’m Feeling
5. Aurora

撮影=山川哲矢 テキスト=黒田隆太朗