VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 19:35-20:35 STAR STAGE
サカナクション

これが2018年版サカナクション!
緊張と緩和と歓喜が描き出す新たなサウンドスケープ

今年からSTAR STAGEの音響がグレードアップしたが、これはサカナクションのためでしょう!と勝手に確信していた。さらに、このきらびやかな照明の下、どうやって踊らせてくれるのか、想像するだけで胸が躍る。しかも、今日のステージはサカナクションにとって2018年最初の、約半年振りのライヴ。ベスト盤リリース後ということもあり、どんなセットリストで勝負してくるのか全く想像がつかないところも期待感を煽る。フェスの短い時間でもサカナクションのライヴは一遍の映画のように構成されているのだからなおさらだ。

「ビバラローック!」山口一郎の第一声のあと、彼の指揮とともに重厚なロックイントロが鳴り響く。そして始まったのは“サンプル”。深くエフェクトのかかった荘厳なボーカルが場内を包み込む。あくまでも序曲といった抑えめのテンションで導入パートを終え、“アイデンティティ”へと続く。この瞬間に巻き起こるフロアの激震はもはやビバラ名物。あまりの揺れで原稿を打つ指が不安定になるのも心地良い。

フェスでのサカナクションというと、ダンスミュージック的に次から次へと曲が連なっていくイメージだが、今日は曲ごとにきっちりと演奏をこなしていく。とはいえ、計算され尽くしたベストのタイミングで次の曲へとつなげていく緻密さは変わらない。それにしても、今日は山口が笑顔を見せる瞬間が多々あった。久しぶりにステージに立った喜びが抑え切れないのだろう。

演奏面以外では、やはり照明がかなり効いていた。特に、“多分、風。”などで見られたように、背後から光を当て、山口のシルエットが浮かび上がる瞬間は鳥肌モノの美しさ。同曲の終わりでは、ステージの上に吊るされた青いライトを左右に振り、観客の注意がそちらに引きつけられている間にセッティングをチェンジ。そして、再びステージにスポットが当たったときには、5台のMacの前にメンバーがズラリと並ぶお馴染みの光景が出現。サカナクションはこの演出を実に効果的に使う。さらに、大サビの前に再び暗転し、数秒後には皆が所定の位置に戻っているのである。何回見ても嬉しくてたまらない。

曲はそこからシームレスに“ルーキー”へと移っていく。イントロが鳴った瞬間に、ここまで数十分も封印していたレーザーが闇を切り裂く。観る側をあっと言わせる見事な演出だ。最後は「改めまして、僕たち私たちがサカナクションです!」という高らかな宣言とともに“新宝島”をプレイし、観客のテンションがピークを突いたところでステージを降りた。

盛大な拍手とスマホのライトによってアンコールを求められた5人は、再びステージに登場。緊張感のあった本編とは打って変わって、山口は「写真撮っていい? みんなも撮っていいよ」と実にリラックスしたムード。そして、新曲“陽炎”をプレイ。山口がギターソロ中の岩寺基晴のカールした髪を持ち上げて遊んでみたり、アンコールらしい肩の力の抜けたパフォーマンスを展開。硬軟使い分けた人間味溢れるライヴは、サカナクションの新たな船出を予感させた。

セットリスト

1. サンプル
2. アイデンティティ
3. セントレイ
4. 夜の踊り子
5. エンドレス
6. 多分、風。
7. ミュージック
8. ルーキー
9. 新宝島
EN. 陽炎

撮影=古溪一道 テキスト=阿刀“DA”大志