VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 17:50-18:45 STAR STAGE
Spitz

歴代の名曲・裏名曲をスリリングに鳴らす
稀代のロックバンドとして今なお君臨する30年選手の矜持

牧歌的なSEとともにスピッツの4人が3年ぶりにビバラのステージに登場。その喜びを噛みしめる間もなく、1曲目“涙がキラリ☆”のイントロが鳴らされる。その選曲に、音色に、歌声に、早くも胸が高鳴る。

スピッツは日本のロックシーンにおいて確固たる地位を確立した、時代の変化に流されることのないロックバンドだ。草野マサムネの歌声もメンバーのビジュアルもほとんど変わらず、年を経るごとにひたすら名曲が増えていく。その一方で、演奏力は年々増強されていき、その時ごとに異なる表情を見せる。それがいつの時代の曲だろうが、今のスピッツの音になっているのである。

今日だってそうだ。2016年リリースの“醒めない”以外は全て約8年以上前の楽曲になる。しかし、どれもソリッドな生々しい演奏によってヒリヒリした空気感を醸しだしている。スピッツがただの懐メロバンドではなく、生粋のロックバンドである理由はこういうところにある。

MCでは、1日目の終盤に差し掛かってきたこともあって、観客の体調を気遣いつつ、「素敵な夜にするからさ」と約束。中盤戦の1曲目ではドラムの短いフィルに歓声があがった。“チェリー”だ。ドラムイントロだけで人を喜ばせ、うっとりさせる曲なんて、この曲かビートルズの“Strawberry Fields Forever”ぐらいじゃないか。

彼らのライヴの楽しみ方のひとつは、今日は一体いつの時代のどの名曲を披露してくれるのかと思いを巡らせること。その点では、今日の歓喜ポイントは“ウサギのバイク”と“スピカ”だろうか。前者は1991年にリリースされた隠れた名作『名前をつけてやる』の収録曲。アップテンポながら牧歌的なサウンドはライヴ中盤のアクセントとして上手く機能していた。それに続いたのが“スピカ”だ。ライヴでは久しぶりに披露された名曲に体温が上がる。素晴らしいメロディを持つ曲だが、リードベースと言っても差し支えないぐらい動きまくるベースラインがこの曲の名曲度を高めている。この曲に限らず、田村明浩のド派手なベースラインが楽曲のエンジン部分を担っていることが非常に多い。

田村の見せ場は技術面だけではない、最後の“8823”と“トンガリ'95”では制御装置が外れたかの如く暴れ出し、ちょっと目を離すと姿を見失うぐらい縦横無尽にSTAR STAGEを駆け回り、飛び跳ね、曲が終わってないのにもかかわらずベースを置いていた。1日目にして断言してしまうが、彼ほど暴れまわるプレイヤーは残りの2日間現れないと思う(BRAHMANのMAKOTOといい勝負か)。田村が象徴するように、驚くほどパンキッシュで危うい一面を持つバンドが、こうして国民レベルで幅広く愛されているんだから面白い。

セットリスト

1. 涙がキラリ☆
2. スパイダー
3. 醒めない
4. 恋する凡人
5. チェリー
6. スターゲイザー
7. ウサギのバイク
8. スピカ
9. 春の歌
10. さわって・変わって
11. 8823
12. トンガリ‘95

撮影=古溪一道 テキスト=阿刀“DA”大志