VIVA LA ROCK 2018

5.3 THU 14:50-15:25 CAVE STAGE
The fin.

ロンドン発、アジア経由で届いた
ワールドクラスの夢想

「みなさん、いい感じですか?」

フロントのYuto Uchinoがそう問いかけると、ゆらゆらと気持ちよさそうに身体を揺らしていたオーディエンスが歓声で応える。そんな光景がとても印象的だった。

The fin.にとってVIVA LA ROCKの出演は2014年以来4年ぶり。結成当初から国境を越えた音楽を志向していた彼らだが、その間にバンドを巡る状況はずいぶん変わった。ロンドンに拠点を移し、現地のシーンに交わり切磋琢磨してきたことで、音楽性はもちろんのこと、バンドの見る風景もグローバルなレベルに広がった。

この日に見せてくれたステージは、そんなバンドのスケールを感じさせてくれるものだった。1曲目の“Illumination”から、浮遊感あるシンセとビートが絡み合い、陶酔感あふれる音色で会場を包む。Yuto Uchinoのシルキーな歌声が響く。

“Pale Blue”、“Through The Deep”、“Misty Forest”など、この日披露されたのは3月にリリースした2枚目のアルバム『There』からの曲が中心。そしてMCでは「ずっとアジアツアーしていて、今日がラストなんで」と告げる。3月から中国の各都市や台湾、フィリピン、タイなどアジア各国でライヴを行ってきた彼ら。その後4月に日本を回り、この日を最後に拠点にしているロンドンに戻るのだという。その後バンドは6月にロンドンで、7月にはウランバートルでのライヴが決まっている。

きっとそうしたアジアツアーの経験も大きな糧になっているのだろう。ステージ上の立ち振舞いも、ドリーミーでサイケデリックだけど芯の太くどっしりとしたサウンドスケープも、不思議な風格に満ちている。デビュー当時は「洋楽っぽい」と形容されていたことの多いバンドだけれど、もはや「洋楽」とか「邦楽」とかそういう枠組みではなく、ただただスケールの大きなロマンティシズムを感じさせるバンドに化けてきている。“Shedding”では頭を大きく前後に振りながらプレイするなど、メロウネスへの耽溺だけでなくエネルギッシュなパフォーマンスも繰り広げる。

ラストに“Glowing Red On The Shore”披露し、大きな拍手と歓声に包まれてステージを降りた彼ら。未来を感じさせる空間がそこにはあった。

セットリスト

1. Illumination
2. Pale Blue
3. Through The Deep
4. Misty Forest
5. Afterglow
6. Shedding
7. Night Time
8. Glowing Red On The Shore

撮影=小見山 峻 テキスト=柴 那典