VIVA LA ROCK 2018

5.4 FRI 19:35-20:35 STAR STAGE
THE ORAL CIGARETTES

新たな時代の幕開けが、ここにあった。
「今を生きる」バンドが最強のヒーローになった夜

「5年間、ともにずっと歩んできました」。山中拓也(Vo/G)はそう言った。ビバラには5年連続出場。CAVE STAGEから一歩一歩階段を上り、持ち前の負けん気の強さで噛み付くようにバンドの力を増してきたTHE ORAL CIGARETTESは、今年、STAR STAGEのヘッドライナーとしてステージに立った。

そのことの意味は、今年フェスがバンドに託した思いは、彼ら自身が、そして集まったオーディエンスが一番わかっていただろう。アリーナはスタンディングエリアもスタンド席もぎっしりと埋まった満員。期待が熱気になって渦増いている。

壮大なオープニングSEから中西雅哉(Dr)のドラムソロ、そして真っ赤な衣装を着た山中拓也がステージ中央で大きく手を広げ、“ONE'S AGAIN”からライヴはスタート。最初の一音から迫力を増した今のバンドのスケール感が伝わる。「ここから闇の奥底まで引っ張り上げてやるからな!」と披露した“カンタンナコト”ではオーディエンスが飛び跳ねて床が揺れ、山中が耳に手をあてると全員の合唱が響く。

「待ってちゃ何も始まんねえよ。お前ら、楽しみも苦しみも自分の力で全部掴みにいけ!」と披露した“CATCH ME”では、あきらかにあきら(B)が足を高く振り上げ、鈴木重伸(G)は髪を振り乱しギターを弾く。レーザーが飛び交う。

「新時代の幕開けをしたいわけですよ! いつまでも先輩に頼ってられないんですよ! ロックシーン、戦ってなんぼだって思ってるんで」と山中は叫ぶ。そして「激しい曲がすべてじゃない! 楽しい曲がすべてじゃない!」と披露した“マナーモード”と“接触”の2曲は、このバンドの持つ唯一無二な底力を示すものだった。葛藤や悩みや、ダークで汚い心の持つエネルギーを燃料に炎を上げるような曲。畳み掛けるビートに、山中とあきらかにあきらが並び目を見開いてスリリングな歌を放つ。

こうしたオーラルの「闇」を象徴するような2曲があったから、一転して「光」を象徴するような“Rel”も感動的に響いた。この日に出演したバンドたちへの感謝の思いを伝えた山中は「歌って、ときどき誰に伝えたらいいかわからなくときがあって。自分のために書いてることがほとんどで。でも一曲だけ誰かのためにって思った書いた曲があるので聴いてください」と告げて、アカペラから“Rel”を歌う。高らかに鳴り響く包容力を持った、彼らにとっての一つの到達点のような曲だ。

終盤は「もう一丁、ここから飛ばしていくか!」と初期の代表曲“Mr.ファントム”、そして“狂乱 Hey Kids!!”と続け、ラスト“BLACK MEMORY”へ。力いっぱいに全員が拳を突き上げ、大合唱と共に山中が全身全霊を込めて歌う。全てを燃やし尽くすようなテンションで演奏を終えた4人はステージを降りた。

アンコールに呼ばれ再びステージに登場した4人は深々と頭を下げ、「改めて思いましたけど、ここでワンマンしたいです」と山中は言う。まだまだ前に進みたい、ここから大きく羽ばたいて、誰にも負けないバンドになりたいと野心を語る。

そして「どんなに大きくなっても絶対に初心は忘れない」と、最後にプレイしたのはメジャーデビュー曲“起死回生STORY”。収録アルバムは『The BKW Show!!』。彼らのスタート地点にあったのは「BKW=番狂わせ」の心だった。逆境を跳ね返す不屈の精神だった。

でも、もう彼らの存在は「番狂わせ」じゃない。ロックシーンの王道に堂々と名乗り出たこの日のTHE ORAL CIGARETTESのヒロイズムに満ちたステージは、きっと、VIVA LA ROCKというフェスが生んだモニュメンタルな瞬間の一つとしてこの先も思い出されることになるだろう。

セットリスト

1. ONE’S AGAIN
2. カンタンナコト
3. CATCH ME
4. マナーモード
5. 接触
6. Rel
7. Mr.ファントム
8. 狂乱 Hey Kids!!
9. BLACK MEMORY
EN. 起死回生STORY

撮影=古溪一道 テキスト=柴 那典