KICK OFF VIVA!!! LIVE REPORT

KICK OFF VIVA!!!

KICK OFF VIVA!!!【恵比寿LIQUIDROOM編】

2018年1月18日(木)
恵比寿LIQUIDROOM

出演:打首獄門同好会 / Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / パノラマパナマタウン / フレンズ

2017年11月の北浦和KYARA編に続き、VIVA LA ROCK 2018へ向けて2度目の開催となったKICK OFF VIVA !!!恵比寿リキッドルーム編。
最高気温16度という、この時期としては穏やかな気候の中で迎えたキックオフは、新年を迎えてから間も無くということを踏まえ、ロックを愛する者たちの新年会というオフ会めいた雰囲気も感じる最高の1日となりました。
ビバラにとってこのキックオフの意味合いはとても大きい。2014年初回のビバラの第1弾アーティスト出演発表をする日にZEPP TOKYOで開催したのがキックオフの初回でもあり、つまりは「ビバラより早く開催されたビバラ」のような存在のフェスイベントなのである。
過去に2015年1月12日には、成人の日なだけに成人式からそのまま振袖姿で会場に来てくれた「ハタチのSHISHAMO」がメモリアルなライヴを繰り広げたことも話題となったこともあるKICK OFF VIVA !!!。今回は東京のど真ん中の恵比寿に、打ち首獄門同好会、フレンズ、Creepy Nuts、パノラマパナマタウンが集結してロックの新しい未来を照らし出そうと、激しく開催されました。

前回の北浦和KYARAでは、ライヴの合間に出演アーティストのトークライヴが披露されたが、今回は新年会ならではの企画が目白押し。
まずは購入した方々から「シャツ5枚と帽子とラババンとか、これは本当にあり得ない神のような福袋だ」と言われた1袋1000円のビバラグッズ福袋。そしてみんなのフェスTやバンTやラババンや缶バッジなどを持ち寄って交換会をしようという「グッズトレードマーケット」。さらには、前述した成人の日キックオフでも行った「アーティストもガンガンつくぜ!な餅つき大会」が合間を縫って行われた。ちなみにビバラチームの舞台監督や運営スタッフが、腰の痛みを顧みずにつき続けた都合3回の餅つき大会の餅は、過去最大級に美味くできた!と誰よりもスタッフが盛り上がっていたことをお伝えさせていただきます。

その中でのライヴ! ライヴ! ライヴ!
まずはデビュー前からビバラ本体に出演するという、ビバラの申し子のような「パノラマパナマタウン」。彼らは実はこの日の前日である1月17日にメジャーデビューを果たしたのだが、そのバンド人生の転機の翌日だけあって、気概も高ぶりも半端ない、まさにメモリアル感が極まったライヴとなった。実はメジャーデビューだけではなく、ヴォーカルの岩渕の誕生日がまさにこの日だったという目出度いことが満載の、この上ないキックオフライヴ。彼らの中にはパンク、ヒップホップ、歌謡曲などが整理されずに入り混じり、よく言われる「おもちゃ箱をひっくり返したような」という言葉が、バンドシーンでは今一番似合う存在なのだが、去年の暮れ辺りから、そのひっくり返したおもちゃ箱の中身がよく見えるロックバンドになり、音楽好きにはたまらないライヴを披露するようになった。そんな彼らの今の瞬発力と可能性と、メジャーデビューした感慨がぶつかっては爆発する、まさに気狂いじみたパーティーライヴで、この夜宴は幕を開けた。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

2番目の出演は「Creepy Nuts」。彼らは過去2年間で前夜祭に2度も出演してもらっている、ビバラの盛り上げキングのような存在である。この日もステージに出て来てくれるだけでフロアが安心するという鉄壁な空気感を醸し出すが、彼らの凄いところはその上でハラハラさせてくれるところ。ラッパーR-指定十八番の「フロアからお題を次々にもらい、それを全部フリースタイルの中で織り交ぜる」という音楽曲芸も、そしてDJ松永十八番の、ドラマティックなターンテーブルソロも、もう何十回と見せてもらっている。何十回も同じものを見れば、人はそれを安心して見るか飽きるかのどちらかになるはずなのだが、Creepy Nutsのそれは安心もできないし、もちろん飽きることもない。何でこんなアクロバティックな音楽プレイができるんだ? いい加減そろそろ間違えるだろ? いつまでも人間がファインプレイを繰り返せると思ったら大間違いだ、みたいなドキドキハラハラが収まらないのだ。しかも彼ら2人の武器は、「なぜ、こんなにも楽しそうで、なぜ、こんなにも暗いんだ!?」という感情のルサンチマンそのもので、そのカオスは今年のキックオフでも盛り盛りでした。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

ここでインターバルの新春餅つき大会。
実家が餅屋の男がつく餅は一味違うぜ! とパノラマパナマタウンのヴォーカル岩渕を先頭に、打首獄門同好会までがついた餅が美味いことったら!!! そんな、アーティストが必死に餅をつく健気な姿を拝みながら、2018年、打首獄門同好会から餅の歌が生まれることを願わずにはいられませんでした。

KICK OFF VIVA!!!

そんな粘りに粘ったインターバルの後は、「フレンズ」。彼らはMCでも話してくれたように、初めて出たフェスがビバラだという、フェスにとってもとても幸せな因果があるバンドである。セカンドキャリア組が集まった肩の力が抜けたリラックス感と、逆にそういう円熟味を感じさせないフレッシュネスなパフォーマンスとグッドソングが自然と溶け合ったパーティータイムを、この日も「音楽の笑顔」満載で届けてくれた。音楽というのは日常と非日常の狭間にあるものである。だからこそ日常のことを歌う歌や非日常を歌う歌があるのだが、フレンズの歌は日常的な時間を過ごすことをやり過ごすことなく、時にその日常の中にこそ非日常な幸せや喜びがあるのだと歌って鳴らしてくれる。そんな彼らが響かせる日常の中の非日常こそがフェスなんじゃないかと思うことも多いのだが、この日もそんな極上のハッピータイムを届けてくれた。さらには最後にCreepy NutsのDJ松永を呼び込み、彼らお得意のコラボタイム。そのフィナーレにはR-指定も乱入し、本当に音楽ファンの心の中をキックオフさせてくれた。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

さあ、終わることなきパーティーだと思われた夜も最後の時を迎える。そう、今宵のヘッドライナーは、バンド名を書いただけで泣く子も黙る「打首獄門同好会」だ。ステージ転換の中で大きなスクリーンが現れたり、ギターやベースのアンプには不穏な刺青、いや、ペイントがなされていたり、瞬く間に独自の世界観がリキッドルームを打首の館に変えてゆく。その変化を瞬きもせずに見つめながらムンムンとしているファン。もう、ライヴが始まる遥か前から彼らのライヴは始まっていた。
本当のライヴが始まると、後は打首にしか出来ない拷問タ、いや、轟音タイム。こだわり抜いた各楽器の音と、その音に混ざったりぶつかり合ったりしながら、快感を呼び込む発語感を持った歌、歌、歌。彼らのロックは、その音だけでエンターテイメントがある意味完成されてゆくのだが、そこにさらに絶妙のZ級、いやいや、絶妙なセンスによるB級映像が投射される。しかもファンはその映像を楽しみにしているフリをしながらーーおいおい、あんたたちずっと首を降り続けて、映像なんて見ちゃいないじゃん!という、もう本当にとにかくツッコミどころが満載で、しかもロックの醍醐味しか鳴っていない最高のライヴ。本当にご馳走様でした!!

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

なかなか起こりえない組み合わせでありながら、マイペース同士どこかで繋がってゆく空気感。音楽のジャンルは全く違えど、それでもそれぞれが音楽的に極めたセンスを持っているので、ライヴが続いてゆくだけでこの日しか生まれないグルーヴが構築されてゆく爽快さ。楽しませ上手な達人に集結してもらい、ビバラは最高の新年キックオフを遂げることができました。
集まってくれたアーティストの皆さん、遊びにきてくれた遊び上手な音楽ファンの皆さん、ありがとうございました。あれだけクレイジーであれだけあたたかな時間を一緒に作ることができたことを、美腹は、いや、ビバラは本当に嬉しく思っています。

それでは出演してくれたアーティストのワンマンやツアーでまた会いましょう。
そして、ゴールデンウィークにさいたまスーパーアリーナで会いましょう!

鹿野 淳(VIVA LA ROCKプロデューサー)
photo by TAKAHIRO TAKINAMI


KICK OFF VIVA!!!

KICK OFF VIVA!!!【北浦和KYARA編】

2017年11月12日(日)
ライブハウス北浦和KYARA

出演:Amelie / DOTAMA / ピエール中野(凛として時雨) / FINLANDS (※五十音順)
DJ アクト:石毛輝(lovefilm / Yap!!!) / 鹿野 淳

VIVA LA ROCKのキックオフイベント「KICK OFF VIVA!!!」。過去は単発で行われてきたこのパーティーだが、2018年のVIVA LA ROCKに向けてはカウントダウンパーティーとして計3回の開催を予定しており、その1回目「北浦和KYARA編」が2017年11月12日に開催された。

この「KYARA」はビバラのお膝元であるさいたま市の北浦和を代表するライヴハウスであり、the telephonesやドミコといったバンドを育て輩出してきたハコ。それこそthe telephonesメンバーはかつてKYARAで働いていたこともあるし、積極的に海外のバンドを招聘してきた歴史もあるなど、地元・さいたまにアクチュアルなロックカルチャーを根づかせ活性化するべく志を持ってずっと動き続けてきたライヴハウスだ。そんな場所からVIVA LA ROCK 2018へのスタートを切ることは、ビバラにとってとても幸福だし必然的な出来事だと言っていい。

トップバッターとして2018年への口火を切ったのは、Amelie。この日の出演者は埼玉やビバラとゆかりの深い面々がラインナップされていたのだが、中でもAmelieは埼玉県・越谷出身のバンドだ。「KICK OFF VIVA !!!は来年のビバラに向けてのキックオフパーティーなんだよね。ということは、みんなわかってる? 今このAmelieからVIVA LA ROCK 2018が始まるってこと!!」——そんなmickの力強い宣言と共に、ポジティヴなエネルギーを軽快にドライヴさせていくような、熱量の高いバンドサウンドがあっという間にフロアを巻き込んでいく。時に豪快にギターをかき鳴らし、時に繊細な情感をキーボードの旋律に託しながら自由に歌を放つmickと、そんな彼女の歌をどこまでも天高く突き抜けていくためのバネとなる、しなやかなパワーを持って打ち鳴らされるバンドのダイナミクスが観ていて気持ちいい。先日リリースされたばかりのシングルに収録されたよりポップな方向へと挑んだ新曲“step!”、“朝は来る”も交えながら、熱くエモーショナルなパフォーマンスで見事ビバラ2018への切込隊長の役を果たしていた。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

続いて登場したのはDOTAMA。2015年には、DOTAMAや泉まくらをはじめ気鋭アーティストを擁する埼玉拠点のインディレーベル「術ノ穴」の主宰でもあるトラックメイカーデュオFragmentと共に、VIVA LA ROCKのアフターパーティー「AFTER VIVA!!!」に出演したこともあるDOTAMA。この日ものっけから、アタックのクリアな発語から生まれるリズムと、卑屈ではあるんだけどポジティヴで痛快な後味を残すリリックの妙でオーディエンスの心を掻っ攫っていった。group inouのimaiによるファニーかつスタイリッシュなビートに乗って「アレ」をモチーフに上手くいかない生活を歌い飛ばす“Y☆KAI WATCH”や、理不尽に耐えつつ毎日頑張るすべての働きマンに捧ぐ“通勤ソングに栄光を”、さらに上司に対する怒り爆発&ちょっと過激な“リストラクション”など、身近なテーマに自虐も憤りも虚しさも情けなさも日々の悲喜こもごも全部ぶちまけ昇華していくような、そんなラップにフロアも心の底から大盛り上がり。力技でねじ伏せるのではなく時に知性とユーモアを感じさせ、“東北道”のような曲では真っ直ぐにその想いを乗せることも厭わないDOTAMAの個性を余すことなく味わえるステージだった。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

ちなみに各アクトの転換の最中は、2階のカフェエリアにて、出演者とVIVA LA ROCKプロデューサーである鹿野によるトークショーも行われた。3回にわたるトークタイムに登場したのはmick、ピエール中野、石毛輝。終始和やかな雰囲気の中、それぞれビバラとの関わりや想いを肩肘はることなくざっくばらんに話す距離感の近いトークライヴに観客も聞き入っていた。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

ライヴアクト3組目は、ピエール中野(凛として時雨)。言わずと知れた埼玉が誇る名ドラマーであり、VIVA LA ROCKには凛として時雨やDJとしての出演以外にも、「VIVA LA J-ROCK ANTHEMS」というビバラのためだけに結成されたスペシャル・カバーバンドのドラマーとして毎年参加してもらっており、とても繋がりが深いアーティストだ。この日はDJではなく、ドラマーとして本当にドラム1本のみでの勝負。音源を流しつつその場で生ドラムをプレイしていくというスタイルの、ドラマーの技を集中して堪能できる興味深いショウであると同時になかなかにシュールでもあるパフォーマンスでもあるわけだけど、その鮮やかな演奏力にどんどん惹きこまれていく。前半は“Telecastic fake show”や“abnormalize”といった時雨曲や大森靖子の“draw (A) drow”といった音源でも自身が叩いている楽曲を披露していったが、中盤、キュウソネコカミの“良いDJ”からは、DJ+ドラム生演奏みたいな趣でガッチリフロアを上げていく。“monkey discooooooo”では石毛輝が飛び入りして歌う一幕もあり、オーディエンスも大盛り上がり。中でも圧巻だったのは“どんぐりころころ”。誰もが知るこの童謡に「木から落ちて転がって池にハマるどんぐりの気持ちに立って」表現するドラムをつけるという、しかもそれが「千手観音」の異名をとるドラマー=ピエール中野の真骨頂みたいな乱れ打ちドラムで、ものすごかった。伊達にこの一人ドラムスタイルで47都道府県を回ってない、さすがというべきライヴだった。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

ライヴアクトの最後を飾ったのは、FINLANDS。前進バンドを経て2012年に結成されたヴォーカル&ギターの塩入冬湖とベース&コーラスのコシミズカヨのふたり組で、ドラムとギターにサポートメンバーを迎えた4人体制で活動をしているバンドだ。ライヴハウスシーンではこの1年ほどで着実に頭角を現し始めている存在だが、何よりも今年7月にリリースしたミニアルバム『LOVE』に惚れ込み、このKICK OFF VIVA!!!並びにVIVA LA ROCKへのオファーを行なったとのこと。体の底から湧き上がる想いや衝動と音楽を歌い鳴らさねばならない必然をきっちりとその歌と音塊に託し、迸るパッションの中にキラリと輝く光や繊細な心模様を映し出していく演奏が素晴らしく、おそらくこの日初めて観たという人も多かっただろうけれど、ライヴが進むにつれてはっきりとオーディエンスの心を掴んでいった。そのメロディからは確かなポップセンスを感じることができるが、それよりも彼女達の中にある「この歌・この音楽でなければ表せない何か」が鮮やかにその楽曲とその演奏に表れていて、それがダイレクトに心を打つのだ。ささくれ立った心を時にガンガンに燃やし解放し、時にすっと沁み入るように柔らかに包み込む塩入の歌声もとてもいい。最後には塩入がスピーカーの上によじ登り、完全燃焼してフィナーレを迎えた。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

ラストはthe telephones/lovefilm/Yap!!!の石毛輝によるDJで締め。埼玉出身、ビバラとは初年度からガッチリとタッグを組み、自身のバンドでのライヴ出演はもちろんのこと、各アクトが登場する際のジングルも毎年石毛が手がけているという、VIVA LA ROCKとは切っても切り離せないベストパートナー的存在でもある。この日のDJでも、1曲目には当日の朝に制作したという♪ビビビビビビビバラローック♪という声ネタも交えたマッシュアップを展開したり、石毛の個性が光るDJプレイでオーディエンスを自由に踊らせていた。最後はthe telephonesの“Love&DISCO”をかけながらの熱唱でフロアのシンガロングも引き起こし、幸福な大団円へと導いた。その余韻と興奮が冷めやらぬ中、フロアではどこよりも早くVIVA LA ROCK 2018の出演アーティスト第一弾発表が行われ、この日集まったオーディエンスに共有された。もちろんこの日出演したアーティスト達は皆出演決定。いよいよ来年のゴールデンウィーク、VIVA LA ROCK 2018に向けて、最高の形で走り出すことができたキックオフパーティーとなった。

KICK OFF VIVA!!! KICK OFF VIVA!!!

次回のKICK OFF VIVA!!!は2018年1月18日、LIQUIDROOM ebisuにて開催。楽しみに待っていて欲しい!

(有泉 智子)
撮影=音宿ごりら屋’さかな'

VIVA LA ROCK 2018