VIVA LA ROCK 2019

5.4 SAT 19:35-20:30 STAR STAGE
ASIAN KUNG-FU GENERATION

タフな時代を生き抜くための
ロックンロール=音楽の力

4日間の中でも最も音楽的な多様性に富んだ2日目、そのSTAR STAGEのトリを務めたのはASIAN KUNG-FU GENERATIONだ。オーセンティックなロックバンドのスタイルを追求しつつ、今のグローバルなポップミュージック・サウンドの時代性にもアンテナを立て、新たなバンドサウンドを模索し続ける——そんな彼らのアティチュードが十二分に発揮された今日のステージは、アジカンが多くの後進バンドからリスペクトされる理由が見えた圧巻のステージだった。

暗闇の中から聴こえてくるかすかなギターのアルペジオ、そこに淡い光が差し、サポートのthe chef cooks meのsimoryoも含めた5人の姿が見えてくる。静かに歌い出す後藤正文(Vo&G)の歌声に鳥肌が立った。1曲目は昨年リリースしたアルバム『ホームタウン』からの曲“UCLA”だ。続く“ホームタウン”、そして“荒野を歩け”と、前述したバンドサウンドへの探究心が結実した『ホームタウン』のモードが反映された演奏が繰り広げられていく。勢いやただヘヴィな音像で押していくというのではなく、人の魂に触れて着実に揺らしていくようなグルーヴが立ち上がる。

「自分たちがロックを始めた頃って、今日みたいにいっぱいいろんなバンドが集まって、いい空気がこんなに広い場所を満たすことなんて、想像もしていなかった。だから、今日は出てきた瞬間から最高で、本当に楽しいです。みんなも自由に楽しく揺れて帰ってください。誰の真似もすることないよ、楽しくね」という後藤の言葉と共に演奏されたのは“君の街まで”。さらに“リライト”ではスペシャル・ゲストとしてCreepy NutsからR-指定が登場(彼らは同曲でアジカンのトリビュートアルバムに参加している)、リスペクトと感謝に溢れたフリースタイルをキめ、STAR STAGEの熱量が一気に爆発した。

ちなみに後藤の弁によると、このコラボは本当に急遽決まったらしい。「(R-指定が)さっき楽屋にいたから『やる?』って聞いたら、『やります!』っていうからさ。カッコいいよね。こうやって他のアーティストと交流できるところもフェスの素晴らしいところだよね」——そして、それをその場で結実させてしまう両者のミュージシャンシップがまた素晴らしい。

“迷子犬と雨のビート”、“踵で愛を打ち鳴らせ”と代表曲を次々とたたみかけた後、喜多建介(G)と後藤のギターキッズ然としたツイン・ギターのプレイが冴え渡った“センスレス”、そして、伊地知潔(Dr)と山田貴洋(B)の紡ぐシンプルながらもヘヴィでステディなビートが映える王道ナンバー“スタンダード”へ。

「今日は、どうもありがとう。ささやかな俺たちの休みをさ、こんな幸せな時間にできて嬉しいです。明日からも胸張って、生きていきましょう」

特に震災以降の彼らの楽曲に顕著だが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONは斜に構えて世を拗ねた態度をとるのではなく、どこまでも真っ直ぐな希望を歌う。本編ラストに演奏された“ボーイズ&ガールズ”の、<愛嬌のない社会に産まれた犬みたいにさ/「興味ない」みたいな言葉で切り捨てないでね >という歌詞は、考えるだけで気分が暗くなるような社会を力強く希望を持って生きていって欲しいという、今日この場に集った若者達に対する切なるメッセージが込められているように思えた。

アンコールで演奏された新曲“解放区”は、まさにそんなASIAN KUNG-FU GENERATIONが掲げてきたテーゼを一歩推し進めたような、心の底からの自由を希求する楽曲だった。既存の地図を放棄して、新しい地図を。与えられる自由ではなく、自ら掴み取る自由を——。<笑い出せ/走り出せ/踊り出せ/歌い出そう/解放!>という歌詞は、決してオプティミスティックなものではない。むしろ、人々が自由に心を解放できる状況とは真逆の方向へと進んでいるような現実を受け止めた上で、だからこそ、一人ひとりが心を解放し、本当の自由を掴み取るんだと呼びかけ鼓舞する、プロテストの言葉なのである。

決して日和ることなく、けれど真摯に、そして愛を持って「今」を見つめ、そこで生きる自分自身ができることは何なのかを探し歌い続けること——そういうアティチュードでロックを貫き続けてきたASIAN KUNG-FU GENERATIONの音楽は、日々を生きる僕らの背中をそっと押してくれる。

「このタフな時代を生きていく中で、またどこかで会いましょう」——最後に後藤がオーディエンスへと語りかけた、その約束を胸に、僕らは僕らのタフな日常を誇りを持って生きていくのだ。

テキスト=小田部 仁

セットリスト

1. UCLA
2. ホームタウン
3. 荒野を歩け
4. 君の街まで
5. リライト
6. 迷子犬と雨のビート
7. 踵で愛を打ち鳴らせ
8. センスレス
9. スタンダード
10. ボーイズ&ガールズ
EN. 解放区

撮影=釘野孝宏

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