VIVA LA ROCK 2019

5.4 SAT 18:10-18:55 CAVE STAGE
Creepy Nuts

「負けたくない」
2人が放った挟持と気概

CAVE STAGEのラストを飾るのはCreepy Nuts。3年連続のビバラ出演。サウンドチェックの段階からフロアはパンパンの満員状態だ。

ステージは、洒脱で猥雑な“阿婆擦れ”からスタート。「楽しい夜にできるヤツは全員手をあげろ!」と“よふかしのうた”、「お前ら、お金好きですか!」と“紙様”を続ける。

もともと親しみやすいキャラクターだし、最近では深夜ラジオ「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)」に加えてDJ松永がTBSラジオの夕方ワイド番組「ACTION」のパーソナリティをつとめるなどラジオ界でも引っ張りだこの存在になっているCreepy Nutsの2人。ステージとフロアの距離も、まるでラジオのパーソナリティとリスナーの関係のような近さがある。

中盤ではお客さんからお題を募って即興でフリースタイルラップを繰り広げる恒例の「聖徳太子フリースタイル」を披露したのだが、そこでも、ただお題を聞くだけじゃなく、エピソードを拾って膨らましたり、お客さんと会話したり、ユーモラスにフリートークを繰り広げていく。今回のお題に選ばれたのは「太極拳のじじい」「ゴールデンウィーク」「DEV LARGE」「タルタル」「とんだ大馬鹿変態野郎」「健康診断」「職場のお局様」「ポーカーフェイス」「ドライりんご」「DOTAMA」という10個のキーワード。R-指定は、その全てを組み込み、きちんと韻を踏み、DEV LARGEに関連してBUDDHA BRANDの新作アルバム発売のニュースに触れるなどストーリーを組み立て、即興のフリースタイルでラップする。改めて誰にも真似できないとんでもないスキルだと痛感する。

後半は<お・ま・た・せ!!>の歌詞を全員が声をあわせて叫んだ“助演男優賞”、そしてCAVE STAGEに集まった全員が飛び跳ねた“合法的トビ方ノススメ”と、熱く盛り上がる展開。「正直、やってる我々が一番楽しんでます」とR-指定は汗まみれで語る。

そして、最後に披露した“生業”が抜群の迫力に満ちていた。まだ音源としては未発表。2019年の3月から4月にかけて彼らが餓鬼レンジャーや般若やSHINGO★西成や漢 a.k.a. GAMIやZeebraといったラッパーたちと対バンで回ってきたツーマンツアー「生業」のテーマソング的な一曲だ。ダークなトラックに、生き様を込めたラップを叩きつける。

R-指定はサウンドチェック時のトークや本編のMCで、何度も「負けられない」という言葉を繰り返していた。SKY-HIやPUNPEEの名前をあげ、ロックフェスにヒップホップアーティストが出ていることに感慨深い思いを抱えながらも、悔しさを抱えているということを率直に告げていた。

「ヒップホップって、そういう音楽なんです。全員、俺が一番って思ってる。天下とったるぞって思いながらペンを握るんですよ。それを思い続けるアホがやれる音楽なんですよ」そんな風に熱く語っていた。そして「俺の覚悟、ラッパーとしての矜持を歌って帰ろうと思います」と披露したのが“生業”だった。

Creepy Nutsの魅力にはひねくれた卑屈さやユーモラスなところもあるけれど、最後の余韻に残ったのは、彼らが放っていた本気の熱、ラッパーとターンテーブリストとしての気概そのものだった。きっと、その覚悟は彼らをもっと大きな場所に連れていくだろう。

テキスト=柴 那典

セットリスト

1. 阿婆擦れ
2. よふかしのうた
3. 紙様
4. メジャーデビュー指南
5. 助演男優賞
6. 合法的トビ方ノススメ
7. 生業

撮影=小見山 峻

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