VIVA LA ROCK 2019

5.3 FRI 12:00-12:40 STAR STAGE
フレデリック

「踊らせる」を超えたフレデリック、
STAR STAGEを40分で「狂わせる」

音楽フェスがこれだけ増えた今、出演アーティストとしてはそこで新規客を獲得したいという思いが多かれ少なかれあるだろうし、それは決して間違いではない。そして、鉄板曲を多く持っているならば、定番の流れややりやすいセットリストというものもあるはず。フレデリックも人を一発で仕留めるキラーチューン……いや人を狂い殺せる楽曲を多数抱えるバンドだ。しかし、彼らは自らの楽曲の人気に甘んじることなく、音源同様、フェスでも常に新たな可能性を探求しているような印象を受ける。今日もそうだ。

結果から言うと、今日はセットリストの半分以上が2月にリリースされた新譜の収録曲で占められ、一撃必殺の“オドループ”を敢えて外してきた。しかし、フレデリックが得意とする麻薬的な反復を抑えめにしてもなお、独自のレシピによるグルーヴが観客の脳を揺らせたのである。

「フレデリック、始めます」という声で始まるSEからして既に腰にクル。そして、メンバーがステージに姿を現し、その流れのままBPMを変えずに鳴らしたのが“飄々とエモーション”。何気ない工夫のように見えて、これがかなり効果的にこちらのテンションを高めた。最初の1音目からダンスタイムは始まっていたのだ。

年々艶っぽくなる三原健司(Vo&G)のボーカルはのっけから素晴らしい。“飄々とエモーション”は観客とのコールアンドレスポンスがキーとなる楽曲だが、いや、もうそれどころじゃない。なんだ、この声は。力強くどこまでも伸びていくが、絞り出す感じではなく、心地よく耳朶を打つ感じ。この声を存分に味わえるだけでも今年のビバラはステージレイアウトを変えた意味がある。広々とした空間に実に映える声だ。

演奏もすごい。“スキライズム”では赤頭隆児(G)によるテクニカルなギターソロがあったりもするが、それ以上にメンバーのビートに対する意識の高さに驚くばかり。同期でシンセが鳴っているとはいえ、たった3人(このブロックで三原健司はヴォーカルに徹していた)による音とは思えないし、だからこそここまで音を研ぎ澄ますことができるとも言える。

「みんな、音楽、楽しんでますか?」から始まる三原健司のほんわかとしたMCは、ほっと一息つける瞬間にも思えた。しかし実際は、頭が狂いそうになる寸前で「気絶するにはまだ早いぜ……」と笑顔で幸福な拷問を中断されているような時間だったのかもしれない。
 
中盤からは、最新アルバム『フレデリズム2』に収録されている“夜にロックを聴いてしまったら”、そして“まちがいさがしの国”でいったん冒頭のノリをリセットし、観客の脳にこれまでとは異なるグルーヴをインプットする。セットリストのさじ加減が絶妙だし、展開を変えてもギッチギチにタイトな演奏がライヴの勢いを落とさない。だからこそ、ラストの“オンリーワンダー”がいつも以上に新鮮かつ強烈に響くのである。

ああ、こうやってフレデリックのライヴは更新されていくんだ。この先、彼らがどこまで向かうのか見当がつかない。過去のFLASH REPORTでは彼らのライヴを「沼」「大海」とたとえてきたが、今は「幸せな拷問」と呼びたい。彼らの音楽は「踊らせる」という枠を超えたところまで到達しているのである。余裕たっぷりにステージを降りる4人の姿に、どこか不敵なものを感じた。

テキスト=阿刀“DA”大志

セットリスト

1. 飄々とエモーション
2. シンセンス
3. スキライズム
4. 夜にロックを聴いてしまったら
5. まちがいさがしの国
6. 逃避行
7. KITAKU BEATS
8. オンリーワンダー

撮影=釘野孝宏

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