VIVA LA ROCK 2019

5.4 SAT 13:50-14:30 STAR STAGE
ゲスの極み乙女。

改めて見せつけた独創性と底力
10年代と20年代のミッシングリンクとしてのゲス乙女

2010年代後半にロックフェスで名を上げた若手~中堅バンドが集った初日に対して、SuchmosやKing Gnuなど、2020年代の新たな顔役たちが揃った2日目のビバラ。ゲスの極み乙女。というバンドは、そのミッシングリンクのような存在だと言ってもいいのかもしれない。4つ打ちのダンサブルな楽曲というイメージもあるにはあるが、そもそもジャズやヒップホップを好み、それぞれの強烈なプレイヤビリティを下支えに、独自のポップを鳴らしてきたバンドである。その稀有な立ち位置が、この日のステージからは改めて伝わってきた。

「ゲスの極み乙女。です。よろしくお願いします。踊ろうぜビバラロック!」という挨拶から、休日課長の強烈に歪んだベースによるミニマルなリフが先導するファンクナンバー“星降る夜に花束を”でライヴはスタート。ラップ風の抑えたヴァースと、一気に開かれるコーラスの鮮やかな対比が実に心地よく、川谷絵音の伸びやかなヴォーカルもいい。ほな・いこかの4つ打ちに導かれて始まった“猟奇的なキスを私にして”は軽快なダンスナンバーだが、プログレ~ポストロック由来の構築美や、女性コーラスを交えたハーモニーがいわゆる「ダンスロック」とは一線を画している。

印象的なピアノのフレーズで始まる“ロマンスがありあまる”にはスピーディーな展開の中にテクニカルなフレーズが詰め込まれ、各メンバーの確かなプレイヤビリティを証明。川谷がハンドマイクでステージを広く使い、「まだまだいけるだろ、ビバラロック!」と煽った“サイデンティティ”は、ギターレスでも十分にパワフルで疾走感がある。「ギターロック」を中心とした日本のロックシーンの中にあって、この編成で戦い続けてきたことも、改めてすごいことだ。

MCを挟んで、中盤では新曲の“ドグマン”を披露。この曲は打ち込みのビートに、叙情的なメロディーが絡む歌ものトラップで、明確な新境地ではある。ただ、最初にも書いたようにもともとヒップホップを志向するバンドであり、川谷はデビュー時にMC.Kと名乗っていたくらいだ。多くのロックバンドがヒップホップ/ラップ全盛の時代をどう生きるかに悩まされる中、軽やかにビートミュージックへと接近し、しかもアヴァンギャルドなアレンジと必殺の美メロであくまでゲス乙女らしく表現するというのは、流石の一言だ。

ライヴ後半では「休日課長の超絶ソロ聴きたくないですか?」という煽りに、課長が両手でのタッピングを含むスラップベースで応え、「でもそれを超えてくるのがちゃんMARIのピアノソロ」という振りには、ちゃんMARIが小さい体でピョンピョン跳ねながらダイナミックな速弾きで応え、「この2人を超えるドラムソロ!」という振りには、ほな・いこかがタムを多用したパワフルなソロで応えてみせる。うーん、やっぱりいいバンドだ。そのままファンキーな“パラレルスペック”で再び場内をダンスフロアに変えると、“crying march”でさらにテンションが上り詰め、ラストは2010年代のロックフェスを踊らせ続けた“キラーボール”。あくまで飄々と、しかしハートは熱く。これからも自らの信じる音楽を鳴らし続ける。

テキスト=金子厚武

セットリスト

1. 星降る夜に花束を
2. 猟奇的なキスを私にして
3. ロマンスがありあまる
4. サイデンティティ
5. ドグマン
6. パラレルスペック
7. crying march
8. キラーボール

撮影=釘野孝宏

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