VIVA LA ROCK 2019

5.3 FRI 11:10-11:45 CAVE STAGE
ニトロデイ

受け継ぐことと更新すること。
新世代のオルタナティヴロック・バンドという生き様

もう、本当にただただめちゃくちゃカッコいいな……と、語彙力を失うレベルの素晴らしいライヴだった。オルタナティヴロック・バンドとしての正統なマナーとエモーションを体現しつつ、ぶち壊しつつ、己が道を突き進んでいくニトロデイのその生き様が完璧な形で体現されていたからだ。

1曲目の“ジェット”の一音目がCAVE STAGEに鳴り響いたその瞬間から、目と耳が離せなくなった。楽器を弾いて、歌い、叫んでいる。ただそれだけのことのはずなのに、4人が炸裂させる轟音が空気を震わせるたびに自分の心もその振動に共振して、激しく震える。それは純度200パーセントのエモーションを彼らが音に込めているからだ。

デビュー当時はNUMBER GIRLの再来(祝復活!)などと謳われていた彼らだが、もうその前置きも必要ないぐらい圧倒的かつオリジナルなプレゼンスをステージの上で見せつける。ほとんどフロアには顔を向けず思索に耽る哲学者のように黙々と爆音を紡ぎ出すやぎひろみ(G)のギター、幾重にも重なる音のレイヤーを最下層で支える松島早紀(B)と岩方ロクロー(Dr) のヘヴィなグルーヴ、そして、小室ぺい(Vo&G)が紡ぐ文学的なリリックと、色気と青臭さが同居したヴォーカル――いったい、何周、輪廻転成したらこんな音が出せるロック・バンドになれるんだろうか。

「ひとりぼっちの時とか、悲しい時とか、どうしようもない時は俺は音楽を聴くんだけど。MudhoneyとかNew Orderとか。涙がこぼれるぐらい俺はその音楽が好きで。僕らがみんなにとってのそういう存在になれたら、それはすごく嬉しいし、誇らしいことだなと思います」

ぶっきらぼうに、はにかみながら一言一言を発する小室のMCには、微塵も嘘やロックフェスだからというてらいはない。横浜出身の、あまり友達のいない、どちらかといえば孤独だった、ひとりの少年は3人の仲間と出会い、本当の意味で音楽に「救い」を見出した。そして、今、自分自身も音楽家として、その役目を引き受けようとしている。

客席の一番後ろ、圧倒された様子で一人じっと拳を握りしめながらステージを眺めていた少年が最後の“フライマン”でオーディエンスの渦の中に飛び込んでいった。きっと、ニトロデイはもっと大きな場所で、もっと多くのどうしようもなくひとりぼっちな人々に勇気を与えることになるに違いない。

テキスト=小田部 仁

セットリスト

1. ジェット
2. カリビアン・デイドリーミン
3. レモンド
4. ボクサー
5. アンカー
6. ヘッドセット・キッズ
7. フライマン

撮影=小見山 峻

FLASH REPORT TOP