VIVA LA ROCK 2019

5.5 SUN 13:00-13:40 VIVA! STAGE
大森靖子

真剣勝負で全てを肯定する
「超歌手」のピンク色の祝福

ロックフェスでも、アイドルイベントでも、どんな場所でもギター1本で真剣勝負の歌を響かせその場を掌握するパフォーマンスを繰り広げてきた「超歌手」大森靖子。5月2日に開催され大盛況のうちに幕を閉じた当フェスの姉妹フェス「ビバラポップ!」のプレゼンターもピエール中野と共につとめた彼女は、まさにジャンルやカテゴリを越境するミュージシャンの代表格だろう。

様々な形でライヴを繰り広げてきた彼女だが、この日のステージは、大森率いるバンド「シン・ガイアズ」のメンバー、あーちゃん(G/きのこ帝国)、畠山健嗣(G/H MOUNTAINS)、えらめぐみ(B/the MADRAS)、サクライケンタ(Manipulate, G, Perc)、ピエール中野(Dr/凛として時雨)、sugarbeans(Key/Tommy&Sammy)と共に立った7人編成のスタイルだ。

「ビバラロック!」と最初のシャウトを放つと、フロア前方ではピンク色のサイリウムが力強く振られる。序盤は“ZOC実験室”“draw(A)drow”とラウドでヘヴィなファストチューンを畳み掛けていくセット。<殺せ 殺せ>と絶叫を繰り返し、最後に<生きろ>と告げる“ZOC実験室”の歌声にはゾクリとするような響きが宿る。さらには塊のようなバンドサウンドに乗せてハイトーンの歌声を叩きつけるパンクナンバー“VOID”、の子(神聖かまってちゃん)が作曲を手掛けたジャンクポップ“非国民的ヒーロー”と続ける。

中盤では「私の部屋に会いにきて!」と、道重さゆみへの思いを綴ったインディー時代の名曲“ミッドナイト清純異性交遊”を披露。そしてメジャーデビュー5周年を記念して今年3月にリリースされたシングルではその道重さゆみとの共演も実現した“絶対彼女”を続ける。

ピアノだけのシンプルな演奏に乗せて歌い始めた大森は、笑顔でキュートな振りつけのダンスを踊り、「私が一番かわいいよ!」「お前が一番かわいいよ!」とコール・アンド・レスポンスでオーディエンス全員に叫ばせる。DA PUMPの「いいねダンス」やライザップのCMをパロディにするユーモラスなパフォーマンスも見せながら、彼女の音楽の根底にある「すべての個の肯定」と「かわいさ」を高らかに鳴らした、この日のハイライトの瞬間だった。

“マジックミラー”に続き、この日最後に披露したのはアコースティックギターを抱えた弾き語りのスタイルから始まった“死神”。メロディやリズムから時にはみ出しながら言葉を畳み掛けていく緊迫感たっぷりの歌声は、彼女の真骨頂だろう。最後にはバンドが壮大なスケールの轟音を鳴らして終演。曲が終わった後には、息を呑むような一瞬の静寂のあと、拍手と歓声がさざなみのように広がっていた。胸をわしづかみにするパフォーマンスだった。

テキスト=柴 那典

セットリスト

1. ZOC実験室
2. draw(A)drow
3. VOID
4. 非国民的ヒーロー
5. ミッドナイト清純異性交遊
6. 絶対彼女
7. マジックミラー
8. 死神

撮影=古溪一道

FLASH REPORT TOP