VIVA LA ROCK 2019

5.5 SUN 16:15-16:50 CAVE STAGE
折坂悠太(合奏)

平成から令和へと歌い継ぐ
魂を震わせる「解放」の歌

昨年発表された『平成』が「CDショップ大賞」を受賞するなど大きな評判を呼び、タイトル通り平成の終わりを見事に打ち抜いた折坂悠太。以前から後藤正文や小山田壮平らが賛辞を贈り、一部では異様に高い評価を獲得していた天才肌である。しかし、弾き語りだけではなく、「合奏」と呼ぶバンドスタイルでの活動も始めることで、その歌唱のみならず、楽曲としてのトータルな魅力を強め、その最初の集大成として『平成』という作品に結実したのだと言えよう。さて、平成に別れを告げた折坂は、令和の時代にどんな歌を響かせるのだろうか?

yoji & his ghost bandとに角すいのメンバーを中心とした、ギター、ベース、キーボード、ドラム、パーカッションという編成のバンドが優美なイントロダクションを奏でる中、折坂がマイクスタンドの前に立つと、「令和元年5月5日、折坂悠太(合奏)でございます。何卒」と挨拶をして、“逢引”でライブがスタート。シャンソンのような、民謡のような独自の歌唱、途中で挟まれる演劇調の台詞など、国籍も年代も超えたところで響く彼の歌は、文字通りのソウルミュージック、魂の歌だ。「大好きなバンドや目当てのバンドを観ても、いまいちのれない。そんな人も中にはいるかもしれません。でも、あなたを解放してくれる音楽は世界のどこかに必ずあると思うので、一緒に探せれば」という言葉が、彼の音楽に向かうスタンスをはっきりと表している。

3月に配信で発表された『平成』以降の最新曲“抱擁”は、ブラジル音楽を基調としつつも、幻想的に展開されるサウンドスケープに乗せて、穏やかなメロディーが歌われる。時代の変わり目を優しく抱きしめて、穏やかな心持ちで、しかし鋭い目線で、これから先を見据えるような一曲。繰り返される<あがらごうごごうごう>のラインが耳に残る“丑の刻ごうごう”に続いて、「調子はどうですか? ちょっと騒がしい曲やります」と言って始まったのは“芍薬”。ソプラノサックスを交えたビッグなコーラスが雄大な景色を描き出すこの曲で、トレードマークのガットギターをかき鳴らしながら熱っぽくがなり、捲し立てる姿は弾き語りのときとも近く、折坂の真骨頂である。

ノイズとソプラノサックスによる奇妙だが美しいアンビエント“take 13”を経て、ラストに演奏されたのは“さびしさ”。マンドリンの印象的な音色と流麗なアンサンブルに乗って、ファルセットを駆使ししながら<今日の日はさようなら>と歌われるこの曲の、「さびしさでこそ繋がれる」という感覚は、きっと時代を超えても変わらないし、音楽だからこそ表現できるものだ。

テキスト=金子厚武

セットリスト

1. 逢引
2. 抱擁
3. 丑の紐ごうごう
4. 芍薬
5. take 13
6. さびしさ

撮影=小見山 峻

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