VIVA LA ROCK 2019

5.5 SUN 9:30-9:50 CAVE STAGE
おと.(ティーネイジサイタマ優勝アーティスト)

「ティーネイジサイタマ2019」グランプリ
孤独に寄り添う歌を紡ぐ、19歳のSSW

3日目のCAVE STAGEは、「埼玉県内在住10代の、明日の音楽アーティストを目指す人たちを応援するオーディション」である「ティーネイジサイタマ2019」のグランプリアーティストからスタート。今年見事にビバラへの出場権を獲得したのは、19歳の女性シンガーソングライター「おと.」。果たして、どんなステージを見せてくれるのだろうか?

「おと.と申します。よろしくお願いします」と控えめな挨拶をして始まったのは、“夜の遠吠え”という曲。思春期特有の内省をメランコリックなメロディーで綴った一曲で、繊細だが芯の強い歌声を持った正統派のシンガーソングライターという印象。あれやこれやを想像しては勝手に盛り上がったり落ち込んだりを繰り返す一人の夜の時間を、時計の秒針のように単調に繰り返されるギターで表現しているのが面白い。続く“嘘月”という曲も、男女の嘘からこぼれ落ちる悲しさを月の描写に重ねる詩的な一曲で、すでに自分の作風を持っているなと感じる。

彼女がいかにして自分の作風を作り上げてきたのかは、この後のMCが明確に伝えていた。「私は今まで友達が多い方ではなかったし、集団の中で一人で生きてくることの方が多くて、たくさん悩んで。正直今もロックフェスで弾き語りで一人でいることが不安で、知らない人がたくさんいる中に一人で放り込まれてるのがとても怖いです。でも、そういう中にいるから、孤独に寄り添える人になれるんじゃないかと思います。ここにいる人たちの心に残れるように、寄り添えるように、歌を歌います」と、言葉に詰まりながらも訥々と語り、「夜が怖くてしょうがなくて書いた歌」と言って歌われたのは“朝に溶けて”という曲。一夜をともにした若い男女のナイーヴな心情を描いた曲で、その歌声にはやはり惹き付けられるものがある。

「大事にしてきたものを、ずっと大事にできる大人になれるように」と言って最後に披露されたのは“ためいき”という曲。Eggs内にある彼女のページではこの曲が試聴できて、歌詞も掲載されているのだが、<深く息を吸って吐いてまた深く吸ってみても苦しくなって言葉が喉で詰まる>というラインが象徴するように、この曲で歌われるのは未来への不安である。しかし、ここまでの3曲に比べれば少しだけ明るいトーンのコードと曲調からは、この不安の裏側にあるかすかな希望が透けて見える。そう、彼女は間違ってない。人間はいつだって孤独だ。しかし、音楽はいつだって君の味方だよ。今日のVIVA LA ROCKには、そんな生き方を体現するアーティストたちが集まっている。3日目のCAVE STAGEが幕を開けた。

テキスト=金子厚武

セットリスト

1. 夜の遠吠え
2. 嘘月
3. 朝に溶けて
4. ためいき

撮影=小杉 歩

FLASH REPORT TOP