VIVA LA ROCK 2019

5.3 FRI 17:00-17:40 GARDEN STAGE
PELICAN FANCLUB

春風が吹き抜けた、昼下がり
3人の覚悟と決意を垣間見

VIVA LA ROCKに2年ぶりに登場したPELICAN FANCLUB。昨年2月から3人編成で活動している彼らだが、スリリングなバンド・アンサンブルの妙は失われるどころかパワーアップしており、初っ端の“Night Diver”からハンズ・クラップが自然とオーディエンスから巻き起こる盛り上がり。「GARDEN STAGE、一緒に歌おう」と、エンドウアンリ(Vo&G)が呼びかけると、花曇りの空を割るような大きな歌声が会場中に響き渡った。

「花の都の千葉県銚子市からきました、PELICAN FANCLUBです」と、埼玉のフェスであるVIVA LA ROCKで「レペゼン・千葉」を主張するエンドウ。それを踏まえて続いて演奏された“ノン・メリー”を聴いていると、90年代のオルタナティヴ・ロックからの影響と、同郷・千葉の先輩であり、彼らの音楽的ルーツでもあるBUMP OF CHICKENから連綿と続く文脈に想いを馳せさせられる。続いて“ベートーヴェンのホワイトノイズ”という新曲を披露。聴力を失ったベートーヴェンをモチーフにしたこの曲はPELICAN FANCLUBの新機軸と言えるような楽曲。彼らの未来を照らし出すようなキラーチューンと言えるのではないだろうか。

「楽しんでいますか? 思った以上に人がいてビックリしています。ちなみにPELICAN FANCLUBを今日、初めて観たって人いますか?(観客、手を挙げる) え……思った以上にいて、びっくりしてます(笑)」と、自ら質問しておいて驚くという高度なボケをかます、カミヤマリョウタツ(B)の発言に笑いが起きる。
「野外とかあんまり似合わないって言われるんですけど、似合いに来ました。よろしくお願いします」という、エンドウのMCに導かれてプレイされた春にふさわしい一曲“花束”。ギターのアルペジオとベースのシンプルだがメロディアスなイントロが、実に美しい。三人の奏でる音がきらきらと輝く春の木漏れ日のようにGARDEN STAGEに広がっていく。

「春の公園で演奏するのは人生で初めてです。みなさん空を飛びたくないでしょうか。一緒に合法的に飛びましょう」と、不敵に笑ってみせるエンドウ。そしてプレイされたのは彼らの代表曲である“Dali”。<春はいいね/公園で空が飛べる/常識さ/春はいいね/現実の度が過ぎていく/あら不思議>という歌い出しが、これまた春の野外にふさわしい。グルーヴィーなスラップ・ベースとシミズヒロフミ(Dr)の力強いビート、変拍子のリフがオーディエンスの体を突き動かす。

冒頭でPELICAN FANCLUBの3ピース・バンドとしての確かな演奏力について述べたが“Telepath Telepath”でも、エンドウがエモーショナルなギターソロを披露し、会場のボルテージを一気に高めていた。その熱量を保ったまま、最後に披露されたのは“記憶について”。まだまだ聴き足りないといった様子のオーディエンスの姿に思わず「残念だな、また会いましょう」という言葉を漏らす。オーディエンスも拳を突き上げ、バンドも力の限り演奏して、この日のステージは幕を閉じた。

……と、思いきや、終演後SEがかかっているにもかかわらず、再度、舞台の上に戻ってくる3人。「時間が余ったからもう一曲やれって言われた。ラッキーだね。ありがとう。ダサいけど勝手にアンコール!(笑)」と、おちゃらけるカミヤマ。予定調和で終わらず、オーディエンスの期待にどこまでも全力で応えようとするPELICAN FANCLUBの3人のバンドマンとしてのスピリットを見た気がした。
「歌える人は、歌ってください。素敵な夜を、PELICAN FANCLUBでした」とエンドウが別れの挨拶を告げ、演奏されたダンス・チューン“ハイネ”。GARDEN STAGEを限界まで踊らせて、3人は爽やかな春風のように去っていった。「野外が似合わない」という言葉を見事に覆してみせたPELICAN FANCLUB。来年は、もっと大きなステージでその勇姿を観たい。

テキスト=小田部 仁

セットリスト

1. Night Diver
2. ノン・メリー
3. ベートーヴェンのホワイトノイズ
4. 花束
5. Dali
6. Telepath Telepath
7. 記憶について

撮影=小杉 歩

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