VIVA LA ROCK 2019

5.4 SAT 10:15-10:50 STAR STAGE
竹原ピストル

静寂すら鳴らす竹原ピストルの名演に
巨大な空間が心で泣いた。

朝っぱらから竹原ピストルの歌が聴けるなんて最高だ。チビチビとビールを飲みながら、ときおり目を閉じたりなんかして、じっと耳を傾けたくなる。弾き語りか、バンド編成で登場するのか気になっていたが、ステージの上からピンスポットが照らしたのは1本のアコギ。そして、そこに現れたのは竹原ピストル1人。自身初のビバラに彼は身一つで臨んだ。はじめましての1曲は新曲“おーい!おーい!!”。今日も朝から汗ばむような陽気だが、気付けば鳥肌が立っていた。

続く“LIVE IN 和歌山”は、<「俺、精神病なんですよぉ~。」/なんて平気で言ってくるお前は/うん やっぱり精神病なんだと思うよ>という、初見の人ならギョッとするような歌詞で始まる。しかし、次第にこの歌に込められた竹原の思いに気付き、そうやって竹原ピストルという歌い手、語り部の世界に引き込まれていくのである。そんなタイミングで放り込まれる名曲“Forever Young”がたまらない。荒々しく歌っているように見えて、竹原はひとつひとつの言葉を大切に届けてくる。

気付けば、彼が鳴らす音以外の全て邪魔になっていく。レポートを書くためにキーボードを叩く音がうるさい。ステージに向けて贈るべき拍手すらいらないのかも、なんて思ってしまう。それぐらい竹原の歌と演奏に黙って耳を傾けていたくなる。曲を重ねるごとに場内の空気が澄んでいく。

そんな雰囲気を弛緩させたのは竹原の自虐的なMCだった。こんな朝から竹原ピストルのライヴなんて観たくないだろう。自分の姿が見苦しいからスクリーンを消して欲しい。なんて具合。こんな他愛もない時間が実は大事だったりする。知らない間に肩に力の入った自分に気付くから。彼の話に笑って、いったんリラックスして、再びグッと集中力を高める。竹原も、観客も。

竹原の凄いところは、フォークでありながらポップフィールドでも受け入れられる楽曲を生み出し続けているところ。“よー、そこの若いの”は、彼の名前を知らなくても普段テレビをつけていれば一度は聴いたことがあるだろう。ここで手拍子が起こってもいいはず。手が挙がってもいいはず。でも、それはなかった。この曲に限らず、40分の間に鳴っていたのは、竹原の歌とギターとハープと曲終わりの拍手と、ちょっとした笑い声。曲終わりと拍手が起こるほんの数秒の間に流れる静寂すら「鳴っていた」。そんな混じり気のない空間をこの馬鹿デカい会場で大勢と共有できていることが、静かな喜びとなって体を満たしていった。

竹原は「優しくしてくれてありがとうございます」と繰り返し言っていた。いや、それはちょっと違う。みんなを優しくしたのはあなたの歌なんだ。

テキスト=阿刀“DA”大志

セットリスト

1. おーい!おーい!!
2. LIVE IN 和歌山
3. Gimme da mic!!
4. Forever Young
5. 落陽
6. Amazing Grace
7. よー、そこの若いの
8. 狼煙
9. MY WAY

撮影=釘野孝宏

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