VIVA LA ROCK 2019

5.3 FRI 9:40-10:15 VIVA! STAGE
Saucy Dog

開幕の号砲を告げる歌。
これぞ、音楽のコミュニケーションだ!

6年目のVIVA LA ROCK、その開幕を告げる号砲を堂々たる演奏でぶち上げたのはSaucy Dogだ。本人たちもMCで言っていたが、初の4日間開催となりパワーアップしたVIVA LA ROCKで「一番最初に音を鳴らす」トップバッターということもあり、バンドの気合と意気込みは十分以上。ステージに登場した石原慎也(Vo&G)、秋澤和貴(B)、せとゆいか(Dr&Cho)の3人はまず拳を付き合わせ、士気を高めた。

Saucy Dogの音は「伝える」ことに特化したサウンドだと思う。楽曲が持つテーマ、そして、彼らが志向する音、アティチュード、そんな諸々が空気の振動を介してダイレクトに伝わってくる。1曲目の“真昼の月”では石原の歌が機材トラブルが原因で聴こえなくなるひと幕もあったが、それがわかった瞬間、オーディエンスから自然と手拍子が巻き起こった。それはトラブルをカバーしようというよりも、「伝わってるよ」という気持ちをオーディエンスがバンドへと伝えた、そんなバンドとオーディエンスの理想的な関係が生み出した非常に美しいコミュニケーションのひとつの形のように思えた。

2曲目の“ナイトクロージング”は、先ほどのアクシデントを完璧に忘れさせるような力強い演奏を披露。MCを挟み、続けて“バンドワゴンに乗って”“ゴーストバスター”と性急なナンバーを続けてフロアに叩きつけ、VIVA! STAGEを熱気で包んでいく。

「去年はCAVE STAGEに出させてもらったんですけど、今年も出れて本当に嬉しいです。VIVA LA ROCKはもう5年目らしいですけど(編注:2014年から数えて5年目、今年は6回目)、すごいですよね。続けることって一番単純なことだけどすごく難しいと思うので」と、MCでそう語った石原。結成メンバーの脱退後、一人でSaucy Dogを続けていた期間のあった彼らしい実感のこもった言葉だ。

秋澤のステディなベース、せとの力強くも繊細さを兼ね備えたドラミングとコーラス、そして石原のメロディアスなギターと唯一無二としか形容し得ない力強い歌声……激情というよりはもっとたおやかでしなやかな「歌」の力を立ち上げ、伝えるアンサンブルの強さが最大限に出ていたのは、最後の2曲だろう。

“いつか”は、今はもう二度と会えない人について歌ったSaucy Dogにとって非常に大切な楽曲だ。ラストのサビ前、一瞬、3人が演奏を止めスタジオ・モードのさいたまスーパーアリーナの広大な空間が深海の底のような静寂に包まれた。一人ギターをかき鳴らし感情をむき出しにしながら歌う石原の歌声が、その静けさを破る。VIVA! STAGEを、Saucy Dogが完全に掌握した瞬間だった。

「来年はSTAR STAGEにみんなと一緒に行けるように。また、いつかあなたに会えますように」と、オーディエンスへの感謝の想いとVIVA LA ROCKに懸ける想いを表明した後、最後に披露されたのは“グッバイ”。<描いた未来を創る事に必死に/食らいついていく まだまだやれる筈/昨日までの自分にさよなら/誰かの言い訳でも聞きながら>――そんな力強い意思の込もった歌詞は、Saucy Dogとオーディエンスの、そしてVIVA LA ROCKとの約束のように聴こえた。

テキスト=小田部 仁

セットリスト

1. 真昼の月
2. ナイトクロージング
3. バンドワゴンに乗って
4. ゴーストバスター
5. いつか
6. グッバイ

撮影=古溪一道

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