VIVA LA ROCK 2019

5.6 MON 15:40-16:20 STAR STAGE
SiM

これぞ「VIVA LA ROCKの魔王」!
緩急自在のレゲエパンクでSTARを喰らい尽くす

この日のライヴの中盤でMAHは「ビバラに出ると祟りに遭う」と語っていたのだが、それも嘘とは思えないほど、実はSiMはビバラにおいて災難続きなのである。ここでは印象的なものだけピックアップするが、初年度はギターがいきなり故障して演奏をストップする事態になったし、昨年はライヴ中にMAHの歯がいきなり欠けてしまう一幕があった。MAH曰く「トリにしろだの出順が早いだの俺らがいちゃもんをつけるから、祟りに遭うんだろうけど」とのことだが、そんなことを言いつつも、ビバラの初年度からSTAR STAGEに君臨し続け、フェスのストーリーをすべて見てきたバンドなのは間違いないし、きっとビバラにとってもSiMはスペシャルな戦友のはずだ。

その歴史を知ってか知らずかはわからないが、端までパンパンに膨らんだアリーナ。そこにまず響き渡ったのは、<ABRACADABRA>(アブラカダブラ)という不気味な呪文――オープニングナンバーは、“A”だ。口ずさみたくなる言葉の響きとニューメタルを融合させたナンバーはSiMの十八番だが、その中でも特に、ヘヴィロックパートからダブパート、そしてブレイクダウンまでが驚くほど滑らかなグラデーションで繋がっていくのが“A”という楽曲である。早速アリーナ全体が、跳ねる・飛ぶ・泳ぐがごちゃ混ぜになった狂乱の絶景を見せる。そしてそこから暇なくプレイされたのは、<oh na na na>の大合唱を巻き起こすアンセム“Blah Blah Blah”だ。「歌う呪文」とでも言いたくなる2曲を矢継ぎ早に叩き込み、さらにMAHはステージの両端を己の覇道のように闊歩しながら、観客を挑発的な目で睨みながら歌い叫ぶ。何から何まで、ビバラのステージを知り尽くしたパフォーマンスである。分厚い轟音とその貫禄。これぞビバラの魔王とでも言いたくなるほどだ。

「最近さ、俺の友達の猪狩(HEY-SMITH)ってやつが、『ライヴ中に動画撮るのやめて』って言ってて。そしたら、お前らに『なんでダメなんですか』って逆ギレされてたの。おめえらさ、いい加減、ガキじゃねえんだから覚えろよ! ………で、そこ(スタンド)に座ってる安全なヤツら! 今からやる曲だけ動画撮れ!」

危うくズッコケてしまうMCで撮影が許可された“Faster Than The Clock”では、スタジアムモードの広大なアリーナに巨大サークルが発生した。大合唱、フィジカルな高揚、ユーモア溢れるパフォーマンス……アリーナクラスのステージを完全に掌握する術を知り尽くしているライヴである。

その勢いのまま“GUNSHOTS”ではスタジアム全体をモンキーダンス一色に。そして“KiLLiNG ME”では、間奏で突如「ここから“KiLLiNG ME”弾けるヤツ、この中にいる?」と観客に緊急アンケートを実施。するといの一番に手を挙げた観客の男性だったが――「え、ギターを弾かせるとは言ってないよ?」とMAHからまさかの言葉。結局その男性はど真ん中のお立ち台に座らされ、ポカーンとしながらもたまアリの絶景を特等席で観ることになったのだった。全体を見渡せば、好き放題、言いたい放題のエンターテインなパフォーマンスである。しかしその軸を貫いているのは、言わずもがな音楽そのもののキレだ。

「レゲエパンク」――つまりレベルミュージックの両極を技術以上に体で消化できるこのバンドの根幹にあるのは、生も死もラヴもファックも同じ線上のものだと捉える精神性である。それと同じように、SiMのライヴも両面性を必ず持っている。温い生き方に歌で中指を突きつけ、音楽の目つきと切っ先は徹底的に鋭いまま。その歌とメッセージの前で足を止めさせるために開かれた「扉」が、このエンタテインメント性になっているのだ。核は一切ブレないまま、緩急自在なライヴを今年も見せてくれたSiM。今年は事件といった事件はステージ上では起きなかったが、トラブルなどなくても、ROCKという言葉だけでVIVA LA ROCKとSiMの歩みは続いていくのだ。

テキスト=矢島大地

セットリスト

1. A
2. Blah Blah Blah
3. Faster Than The Clock
4. DiAMOND
5. GUNSHOTS
6. Dance In The Dark
7. KiLLiNG ME
8. f.a.i.t.h

撮影=釘野孝宏

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