- 5.6 MON 9:40-10:15 VIVA! STAGE
- 四星球

泣いて笑って拳を握る、喜怒哀楽丸呑みロックバンド!
ビバラ最終日、まずは心ごと素っ裸で始めましょう!
ビバラのプロデューサー・鹿野の前説から、「準備運動」と称した綱引き大会(綱の長さ、なんと100m!)に雪崩れ込んだ最終日のオープニング。まさかの抜き打ち綱引きに早くも大笑いのアリーナだが、言わずもがな、そのパフォーマンスは今日の号砲を鳴らすトップバッターへ最高のバトンを渡すためのものである。
<朝だ 朝だ>ということで、森高千里の“ララ サンシャイン”をSEに登場したメンバー4人……と思いきや、あれ、ひとり足りない。そこへ鳴り響いた「四星球ってこっちじゃないの?」という声。声のしたほうへ顔を向けると、なんと北島康雄(Vo)がSTAR STAGE上でスタンバイしている。
「四星球って人気あるんですよ!? STAR STAGEやと思ってました……でもそっちのステージなんやったら、スター盗んでいくわ!」と叫ぶと、スーパーマリオでスターをゲットした時の音楽でVIVA! STAGEへとダッシュで向かう。あー、開始2分とは思えないほど、要素も笑いも運動量も詰め込み過ぎのオープニングである。
ということで、早くも笑いまみれになってから放たれたようやくのオープニングナンバーは、“鋼鉄の段ボーラーまさゆき”だ。四星球のテンターテインなステージに欠かせないハイクオリティな段ボール小道具の数々と、それを手がけるまさやん(G&小道具)自身を歌にしてしまったこの曲。振り付けパートが盛り込まれていることも含めて四星球のFUNな側面を凝縮したナンバーだとも捉えられるが、<作れないものはない><段ボールでいつかはデカイ城を築く>――という歌は、素っ裸のまま何も持たずにどこまでも行くと宣誓する、彼らの闘争心をぶん回しているものだとも言えるだろう。
2ビートで爆走する“いい歌ができたんだ、この歌じゃないけれど”では「いい歌」の完成にはあなたの元気と笑顔が不可欠だと言わんばかりに北島が客席に飛び込み、「いい歌完成パレード」がスタートした。すると北島の後に続くオーディエンスが全員猛ダッシュを繰り広げる、速すぎる大名行列があっと言う間にアリーナを一周。ことごとく力技だが、朝10時だとは思えない暑苦しさと運動量でVIVA! STAGE全体を巻き込んでいく。
冒頭の段ボール小道具でMUSICAの表紙背景を作ってきてまさやんをハメ込んでいた彼らだが、北島はMCでさらに畳み掛ける。「初めて雑誌で表紙を飾るならMUISCAがいいなと思いました。それで、書店の方に『このブリーフ姿の表紙じゃ置けないです』って言われたいです」
そんな言葉にさらに大笑いが起こるが、しかし彼の目と口調だけは大マジだ。その姿が表すように、四星球の音楽のど真ん中にあるのは、無謀だと言われてもアホだと言われても無垢な夢を掴んで離そうとしない闘争心だ。その心がくじけないように、転んでも立ち上がれるように、彼らは笑いで日々に立ち向かっていくのである。その核心が最も表出した楽曲である“クラーク博士と僕”では、夢を持って生きていくことと、人生の儚さと、それでも歯を食いしばろうとする切ない歌に突進するようにして、4人が転げ回る。泣きながら笑う、人間らしさそのものを表したロックンロールを鳴らすのだと改めて表明するようなアクトだ。
「四星球史上、最も僕がステージにいないライヴでした」
「さっき『むち打ちだったんですけど、四星球のライヴに来たら治りました』って言われたんですよ。四星球は医療です! だから、どこかが痛くなったら会いに来てください!」
どこまでも人の近くで鳴らされる、痛みや悲しみに打ち勝つ武器としての「笑い」。その真髄がかつてなく生々しく発揮されたライヴだった。大きく笑って、でもなんだか泣けて、気づいたら拳を握り締めてしまう――喜と哀と楽をすべて暴発させた最高のオープニングに、音楽でしか生めないであろう「最幸」の1日を予感した。
テキスト=矢島大地
セットリスト
1. 鋼鉄の段ボーラーまさゆき
2. いい歌ができたんだ、この歌じゃないけれど
3. 言うてますけども
4. クラーク博士と僕
撮影=古溪一道